キャプテン翼信者の言葉でこのようなものを見かけました。
「キャプテン翼は世界一のサッカー漫画です。作者の高橋陽一さんはサッカーが人気のない時代から、サッカーの楽しさを人々に伝えるべくキャプテン翼を描き続けていたのです」
はっきりいわせてもらいますが、それは大きなまちがいです。キャプテン翼ほどサッカーのおもしろさが伝わらない漫画、サッカーの魅力が伝わらない漫画はほかに存在しません。それどころかキャプテン翼とは、読めば読むほど本当のサッカーから頭が離れていく危険な漫画です。
包み隠さずにいいますと、私も子供の頃、キャプテン翼に夢中になった人間のひとりです。ワールドユース編まで読破しました。たぶん全部で50巻くらいにのぼると思います。
そんな私は当時、自分のことを“サッカーのことをすべて知りつくした人間”だと思い込んでいました。『サッカー漫画の代名詞キャプテン翼を何十冊も読んだんだ。俺にサッカーで知らないことはなにもない』━━という感じ。
それから約10年後━━それまでテレビのサッカー中継はまったく観なかったのですが、日韓ワールドカップの開催を機にサッカーに興味を持つようになり、日本代表の試合は欠かさず観るようになっていきました。
が━━私は愕然とせざるをえませんでした。サッカーのすべてを知りつくしているはずの自分が、サッカーの試合のおもしろさをまったく理解できないからです。
『……こ、これが現実のサッカーの試合なのか?サッカーってキャプテン翼みたいに超人たちがバンバン得点をきめるもんじゃなかったのか……?』━━ここで、ようやく、自分がキャプテン翼にだまされていたことに気づいたのです。
しかし、せっかくサッカーに興味を持ったので、サッカーの戦術本を読んだりして独自の勉強をはじめることにしました。そしてサッカーの試合を深く楽しめるようになれる方法を自分が確立し、世に広めていこうときめたのです。
ところで、ヤフー知恵袋で次のような質問を見かけました。
キャプテン翼はバカマンガにしか思えないのですが、なんであんなマンガが人気だったんですか?
小さい頃キャプテン翼を見てた時は本物のサッカーに触れ合う事がなくて、高校くらいになって(本物のサッカーを観るようになって)久しぶりにキャプテン翼を読み返してみたら・・・爆笑!!!
かなり失礼な言い方になっちゃうけど、この作者サッカー観た事あんのか?って感じでした♪
今も連載あるみたいですが、正直なぜ連載続けられるのか不思議です。
キャプテン翼って面白いのでしょうか!?自分は数回しか読んだことがないのですが現実では100%あり得ないようなプレーばかりで正直読む気になりませんでした…みなさんはどんなところが面白くて読んでいるんでしょうか?
「キャプテン翼」は駄作の中の駄作! 「エリアの騎士」のほうが面白い! その根拠を教えましょう
①当時、キャプテン翼は人気漫画でした ですが、当時は漫画全体のレベルが低かったんです 今、キャプテン翼を連載していても、10週で打ち切りでしょう その点、エリアの騎士は、「エア・ギア」「GTO」「ダイヤのA」「アヒルの空」「シバトラ」「エデンの檻」「FAIRY TAIL」などの、人気漫画がたくさんある中で、上位をキープしています
②女性キャラは漫画にとって重要です 女性キャラがかわいければ、それは傑作漫画です キャプテン翼の、早苗や弥生、ゆかりは可愛くない! エリアの騎士の女性キャラは、美島奈々や群咲舞衣など美人キャラだらけ!
③キャプテン翼はタイガーショットとか、イーグルショットとか、たくさんあるけどどれもただ速いだけのシュートに終止しています カミソリシュートに至っては、ただのカーブです
④翼、岬、三杉、反町、松山、こいつらの違いがよくわかりません かき分けできてません 以上です 皆さんも、そう思いますよね?
「キャプテン翼」って、正直どうよ…
不朽の名作と友が言うので、借りて『初代』を読破。読んだ感想は…「う~ん… これってフットボール?」って感じ…
なんかこれ、フットボールじゃなくて、「キャプテン翼」と言う、別のスポーツなんじゃ?この作者、実はルールすら、まともに知らないんじゃ?それとも、今と昔では、こんなにルールが違いました?
あの…一応確認しますけど、これ、フットボール漫画ですよね?
……この質問者の方たちは、きっと1990年以降に生まれた人たちだと思います。このような感覚の人たちが続々とあらわれてくれていることに私はほっとしています。
一方、キャプテン翼信者たちは次のような反論をしてきます。
「キャプテン翼は世界中で人気があり、なんとあのジダン、トッティ、デル・ピエーロ、ロナウジーニョもキャプテン翼の大ファンなのだ!」
ジダンをはじめとする有名選手たちがキャプテン翼のファン?それはそうでしょう。なぜなら、キャプテン翼くらいしか日本のサッカー漫画を知らないのですから(笑)
漫画にそこそこ詳しい日本人のこの私でさえ30を過ぎるまで、サッカー漫画といえばキャプテン翼とがんばれ!キッカーズくらいしか知らなかったほどです……。
もしもキャプテン翼と同時代にファンタジスタやエリアの騎士が描かれていたら、ジダンは『私はファンタジスタが好きだった』と語り、ロナウジーニョは『僕はエリア派だったよ』と語っている可能性は高いでしょう。
また、このような意見を吐く人たちもいます。
「キャプテン翼はあくまで漫画の話。漫画と現実を一緒にしない」
しかし、これは少し無責任な意見だと思います。
たとえば少林サッカーがコメディではなく、真面目な映画として公開されていたら、それを観た子供たちは少林サッカーと現実のサッカーをきっと混同していたことでしょう。
また、翼が中学時代、奥寺康彦(日本人プロ選手第1号)という実在の人物がゲスト登場したことがあります。こうした点からも『この漫画はリアリティを追求したものなんだなぁ』という印象を受けました。
もしもイナズマイレブンのように【架空の世界の中の超人たちのお話です】という感じで描かれていたなら10歩ゆずって腑に落ちますが……。
最後に━━。冒頭に紹介したキャプテン翼信者の言葉。
「高橋陽一さんはサッカーが人気のない時代から、サッカーの楽しさを人々に伝えるためにキャプテン翼を描き続けていたのです」
残念ながら、それは誤解だと思います。たとえばスラムダンクの作者・井上雄夫はバスケットポールが死ぬほど好きで、バスケットボールのおもしろさをひとりでも多くの人に伝えたいという思いでスラムダンクを描いたのだろうなということは1秒でわかります。しかし、サッカーは未経験で、サッカーの知識も浅い高橋陽一の場合はちがうと思います。
野球一色だった1980年代の日本。『誰もサッカー漫画を描こうとしないから、いっちょ俺がやってみるか。珍しいジャンルだから、運が良ければ注目されるかもしれないな』というノリで【サッカーを題材にした超格闘技漫画】とでもいうべきキャプテン翼を描きはじめた━━というのが真相に近いのではないでしょうか?
なにはともあれ、キャプテン翼のくだらなさがわかる世代の人たちがたくさんあらわれています。このままキャプテン翼が完全に過去の作品になり、人々の記憶から消え去ることを願うばかりです。