アナと雪の女王の続編―勝手に書いてみた― -2ページ目

アナと雪の女王の続編―勝手に書いてみた―

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「…いったいどうしたの?」

アナの控え室に入ったエルサは、信じられないというように、目を見開きました。

「もうすぐ式が始まるのよ?
なのに、何故まだ着替えていないの!?」


アナが呼んでいるからと、使用人に呼ばれ、控え室に来てみれば、目の前にいるアナはいつものモスグリーンのドレスを着ていました。
そして、アナが着るはずのウェディングドレスは、トルソーにきちんと着せられたままだったのです。


「…アナ
もう時間がないわ。
早く着替えを…」

そう言って、使用人を呼ぼうとするエルサの手を握り、アナは首を振りました。

『だって…
着れないのよ。』

「…アナ?」

神妙な顔つきのアナに、エルサは首を傾げます。

『私では、このウェディングドレスを着れないの』

そう言って微笑むアナに、エルサは眉をひそめました。

「……また太ったの?」

『ちッ、ちがうわよ!!』

《また》という言葉に、アナは慌てて否定します。
そして、小さく咳払いをしてから、続けました。

『コホン…あ~、だからね?
このウェディングドレスは、私の為のドレスじゃないってこと!』

「……どういうこと?」

アナの言葉の意味を理解できないエルサは、眉をひそめて尋ねます。

アナは、エルサの問いには答えず、いたずらっ子のように笑いました。
そして、トルソーに被せられたヴェールを外し、エルサの頭へふわりとかけます。

「アナ…!?」

突然のことに、驚くエルサをアナは優しく抱きしめました。


『守らせてほしいの。
エルサの幸せを…』

「私の…幸せ……?」

アナは体を離し、戸惑いを浮かべるエルサの瞳を真っ直ぐに見ます。

『そう、姉さんの幸せよ。
…愛してるんでしょう?
ハンスのこと…』

「それは…ッ」

アナの問いで、エルサの瞳が不意に大きく揺れました。
そうして、真っ直ぐ自分に向けられる瞳から、咄嗟に視線を外します。

「…それは、アナの…勘違いだわ…」

そう言ってからエルサは、自分の声が、震えていることに気づきました。


「私の……
私の幸せは……」


──この国を…守って…


『…愛する人の傍にいること』

そう紡がれた言葉に、エルサはハッとして顔を上げました。
アナは、優しく微笑みながら言葉を続けます。

『私の幸せは、愛する人の傍にいること…
そして、貴女たちの幸せを願うこと───』


───いつか貴女たちにも、愛する人と巡り会う時がきっとくるわ

傍にいるだけで、幸せだと思える人にね?

フフッ…
とっても楽しみだわ───


そう言って、幸せそうに微笑みあう両親の姿が、不意に甦りました。


『お父様もお母様も…、きっとエルサの本当の幸せを望んでるはずよ?』

あの時の母親の微笑みが、目の前のアナと重なって見えます。


「本当の…幸せ……?」

アナはゆっくりと頷き、エルサの手を優しく握ります。

『だから…、もう自分を偽わるのはやめて?
…お願い…』


アナのその言葉に、エルサはハッとしました。


3年前、あのパーティーから逃げ出した夜、もう自分を偽って生きてゆくのはやめようと、心に誓いました。
長い間、本当の想いを隠して生きてきたエルサは、その瞬間、ありのままの自分らしく、生きてゆく素晴らしさを知ったのです。

しかしエルサは、自分が今また同じことを、繰り返そうとしていたことに、気づきました。



『姉さんの幸せは…
…本当の幸せは……何?』

アナにもう一度尋ねられ、エルサの細い睫毛が小さく震えます。


「私の…
…本当の…幸せは……」


──君を…愛してるんだ…

ずっと、一緒にいてほしい───


あの月の輝く美しい夜…

不意に抱き締められ、囁かれた言葉が、エルサの胸を締め付けました。


「……そばに…いたい…」

エルサの透き通った青い瞳から、一粒の雫が落ちます。

「彼の…そばにいたいの……」


──ハンスと一緒に…

生きてゆきたい……