「健全な精神と、健全な肉体は別なものだ。そして、酒は肉体的には不健康であるけれども、精神にとって不健康だとはいえない。すくなくとも、私にとっては、そうだ。私に酒がたのしく、うまく飲めれば、私はこの上もなく健康に仕事ができるのである。」(「人生三つの愉しみ」坂口安吾)
どんな酒でも飲んだら酔えますが、できれば美味しい酒で酔いたいものです。
そして美味しい酒には美味しい料理。この二つは足し算ではなく掛け算であります。故に美味しさが何倍にもなる次第。
お店に行き料理のプロフェッショナルに作ってもらうのもいいですが、自宅のキッチンでだらだらと肴を作りながら酒を飲むのもオツなものです。
うち、美味しいお酒だけやったら物足りひん。美味しい料理もないと生きていかれへん!
そんな欲張りでやらしい体の酒飲みにぴったりな料理の本を紹介していこうと思います。
…決して書くネタに困った末の逃げではありません。ストレートを置きにいった訳ではありませんよ。違いますよ。
そんなカウントノースリーからの第一冊目はこの本です。

豚料理 和・洋・中・韓の基本料理とアイデア料理182(柴田書店)
好きの反対は嫌いではなく無関心だなんてよく聞きます。好きと嫌いは紙一重。好きすぎて嫌いになったり、大嫌いだったのにいつの間にか大好きになったり。人間の心はめんどくさいものです。
何ね!綺麗な女の人見て鼻の下伸ばしてから。このスケベ!…うちアンタなんか好かん!もうデートなんかしてやらんと!
さて、豚です。
醜いだ汚いだ何だのと言われますが、あの愛嬌のあるフェイスとボディー、鳴き声はブヒブヒー。目の前にいたら、色んな意味でみんな無関心ではいられないはず。
そう、豚ほど人間に愛され嫌われている動物はいないでしょう。
宗教上食べない国も多いですが、僕の勝手な推測では、好きの裏返しなのではないか、と。わざわざ禁止するってことは、それだけ美味しくてみんなが好きってことでしょう。それだけ人の暮らしと密接な関係にある証拠。
でも近ければそれだけ嫌われる可能性も高くなるわけで、
おいブタ
なんて言われて喜ぶ人も中にはいるでしょうが、たいていどこの国でもブタは蔑称だと思います。
でも反対に、
僕のかわいいコブタちゃん、なんていう愛の表現をする国があっても全然おかしくない。ちょっと主旨は異なりますが、
ブヒブヒ言ってんじゃないよこの薄汚い豚野郎!…でもお前のこと…大好きだよ!ありがたく思いな!
そんなツンデレ女王様もいるはずです。…何が言いたいのか自分でわからなくなってきました。
さて、噂の気になるアイツはもちろん酒のお供にぴったり。上記の本は、和・洋・中・韓の定番の豚料理を、それぞれの一流料理人が解説したものです。
中にはブランド豚等、手に入りにくい食材もありますが、信頼できるお肉屋さんの常連になれば手に入るかもしれませんし、無理だったら適当に自分なりにアレンジすれば問題ありません。
装丁、写真も大変綺麗です。読むだけでも幸せな気分になれるはず。少し値段は高めですが、その価値はあります。
また、巻末に日本全国の豚の銘柄が載っています。僕の故郷広島だと「幻霜ポーク」が有名です。各地に旅行に行った際に探して食べてみるのもまた一興。
僕は一生することはないでしょうが、子豚の解体方法も載っていますよ。
豚料理の歴史は、人と豚の愛憎の歴史でもあります。その結晶がここに。