ところで、遠足のおやつは違反者が出たり、家庭の事情で持ってこないものもいたらしいので、次の遠足は学校で用意するということになってしまった。みんな同じおやつにするというのであった。

 おやつを買うという楽しみがなくなってしまったものの、次はバスに乗ってポロト湖まで行くという話だったので、喜んでいた。

 バスに乗って、先生がおやつの入った白い紙袋を配り始めた時は、ちょっとうれしかった。中身のわからない箱や袋を開けるのは、どんなときでも楽しい。しかも、それは遠足のおやつ。特別なお菓子。声を出してはしゃぐ子もいた。自分は後ろの座席にいたので、立ち上がって「はやく、はやく」と心が騒ぎだす。

「もう見てもいい?」と言いながら、開けようとしている子がいる。

「まだだめだ。みんなに配り終えてから。」

 注意しながらも、生徒が嬉しい顔をして手をのばして待っているので、先生の顔もほころんでいる。

 ぼくの席にもおやつが届いた。

「見てもいい」

「食べるのはまだだめ。見るだけ。」

 みんな、紙袋を開けて中身を確かめた。それは、ぼくらを例外なく失望させた。

 栄養を考えたカルミン、なぜかしらカンロ飴、おまけはついていないがベルマークはついている森永のキャラメル。塩せんべい、みかん、そしてアーモンドチョコ。何故だか、ぼくらの親の世代はアーモンドチョコが好きだ。

 このセンスの悪いおやつ選びに、バスの中で静かなブーイングがしだいに高まりはじめた。

「なんだ、このおやつ」

「もっとマシなものが入っていると思った」

「あーあ、つまんない」

「去年みたいな方がよかったよな」

あちこちで、不満のつぶやきが聞き取れる声として漏れていた。

 そのとき、先頭に座っていた体育の教師が立ち上がった。(コイツが犯人だ!)

「うるさいッ。なんだ、おまえたちは。ぜいたくを言うんじゃない。先生が子どものころなんか、食べ物だってろくに無かったんだ。こんなぜいたくなお菓子も食べられなかった。文句を言うなら食べなくていい。」

 真っ赤な顔で体育の先生が立ちあがり声をはりあげた時、バスが急に右へ回り先生は少しよろけた。バスの中はシーンとなったが、ぼくたちは、戦争によって食糧をうばわれた世代の子どもであり、同じことを何度も親から聞かされていたのである。どうして、いつも同じことばかり言うのだろう。

 戦争の禍根がここに残り、そして理不尽なカミナリとして、われわれの頭上にも光っていた。