NHKドラマ『チェイス~国税捜査官~』 の再放送が、2、3日の深夜にありました。

録画して、一気に観ました。


こんなに感動したドラマは、何年ぶりでしょう。

特に最終話は傑作でした。


ARATAさん演じる天才脱税コンサルタント 村雲修次。

修次は、財界の大物の妾の子として生まれます。

幼いころ、修次は身代金目当てに誘拐されます。

しかし、父親は本妻に息子が生まれたため、妾の子に多額の身代金を出しはしませんでした。

誘拐犯は腹いせに修次の左腕を鉈で切り落とします。


ところが、実はそれは、母親が自作自演した誘拐劇だったのです。

母親は自分の息子を人質に、愛人から多額の金をだまし取ろうとしたのでした。


大人になって、修次はそのことを知ります。

そして、父親と腹違いの弟に対して、復讐をします。

ですが、復讐を果たしたはずなのに、修次の心は治まりません。


本当に、憎い相手は母親のはずなのに、

自分を愛してくれていたと信じていた母親を憎むことは、

どうしてもできなかったのです。


本当に復讐したかった相手は母親。

父親と弟に復讐をしたところで、気持ちが治まるはずがありません。


そんな修次に恋人の歌織が言います。

「本当に憎い相手を憎みきれないで、世界中を憎んでしまう」


心理療法を受けにいらっしゃる方の中にも、同じような方がいらっしゃるな、と思いました。

親を憎み切れずに、配偶者や子どもや上司を憎んでしまう。

親を憎み切れずに、自分を憎んでしまう。


そこから抜け出すことができるのは愛です。

親から愛がもらえなかったのであれば、誰かから受け取る。

その愛に気づいた時、人は癒されます。


江口洋介さん演じる国税捜査官の春馬草輔。

草輔が、今にも炎上しそうな自動車の下敷きになった修次を助け出そうとしながら言います。


「『泣いた赤鬼』って話、知ってるか。

赤鬼が村人と仲良くなりたくって青鬼に助けてもらう。

そうしたら、今度は青鬼が村人から嫌われてしまう。

俺たちは『泣いた赤鬼だ』

誰も悪くないのに、どうしようもねぇ。

どうしようもないくらい悲しい」


自分の悲しみを草輔に共感してもらえた修次は、草輔に捕えられることします。


「誰も悪くないのに、誰も幸せでない。

やり場のない怒り。

どうしようもない悲しみ。

何を変えたらいいのか分からない。

だって、誰も悪いことをしていないんだから」


そういう家庭状況のクライアントさんも私のところによくご相談にいらっしゃいます。



ゴメンナサイ、長くなってしまいました。


「本当に憎い相手を憎みきれないで、世界中を憎んでしまう」


「誰も悪くないのに、どうしようもねぇ。

どうしようもないくらい悲しい」


この二つの言葉が身にしみた傑作でした。

そして、私は、やはり、こういった人たちの力になりたいのだ、と確かめることができました。


NHKさんDVDにしてください。

親を憎みきれないで苦しんでいる多くの人に観てもらいたいです。