ローリング・ストーンズの「全公式録音を年代順に収録した大河アンソロジー」、「コンプリート・ストーンズ第七集」です。今回のジャケットに写る5人はなんだか妙に楽しそうです。ビル・ワイマンが中央という構図もなかなかないのではないでしょうか。いい写真です。

 第七集はこれまでと趣きを異にし、1965年12月と翌年3月に行われた「アフターマス」セッションによる公式録音がアルバムのほとんどを占めています。この頃になるとロック・ミュージシャンもアルバム単位で作品を制作していくことが中心になってきました。

 「サティスファクション」の大ヒットによって、人気が爆発したストーンズは1965年10月末から四回目となる北米ツアーに出かけました。最終公演は12月5日ですから約1か月間ですけれども、実に31か所36公演をこなしています。どこもソールド・アウト、大盛況でした。

 ツアー終了からわずか3日後、12月8日から10日までハリウッドのRCAスタジオで第一回アフターマス・セッションが行われました。働き方改革など遠い未来のこととはいえ、よくもまあこなしたものです。案の定、ブライアン・ジョーンズには問題行動が目立つようになります。

 このセッションでは、まず英米で2位まであがるシングル・ヒット曲「19回目の神経衰弱」が録音されています。キース・リチャーズのイントロがかっこいい曲です。キースによれば「この曲からだな、イントロリフは俺が担当するようになったのは」ということです。

 英国盤アルバムに収録される曲では、「マザーズ・リトル・ヘルパー」、「邪魔をするなよ」、「テイク・イット・オア・リーヴ・イット」、「シンク」、「ゴーイン・ホーム」がこのセッションでの収録です。「ライド・オン・ベイビー」、「シッティン・オン・ア・フェンス」は「フラワーズ」収録です。

 そして「サッドデイ」は「19回目の神経衰弱」の米国B面、「ルッキン・タイアド」が未発表という具合です。これで都合10曲です。わずか3日間でこの成果ですから凄い。スタジオで時間をかけることが一般的になるのはもう少し先のことですね。

 2回目のセッションは1966年3月7日から11日まで同じハリウッドのRCAスタジオで行われています。収録時間の都合なのでしょう、本作品には「アフターマス」に収録された6曲のみが収録されています。「黒くぬれ!」など残りは第8集をお楽しみにということです。

 ここも「アウト・オブ・タイム」や日本ではとりわけ人気の高い「レディー・ジェーン」など名曲ぞろいです。さらに、「フライト505」、「ハイ・アンド・ドライ」、「イッツ・ノット・イージー」、「アイ・アム・ウェイティング」が収められました。実に創作意欲が旺盛なストーンズです。

 ここでの特徴として強調されているのが、ブライアン・ジョーンズのマルチプレイヤーへの転身ぶりです。徐々にギターに興味を失っていったブライアンはダルシマーやマリンバ、ハープシコードなどを使ってストーンズ・サウンドを決定づけたとの評価です。

 二つのセッションに加えて、本作品にはクリス・ファーロウに提供した「シンク」とイアン・スチュワート、ほぼ唯一のリーダー作品「ステュ・ボール」が収録されています。後者がいい。本作品はこのためにあると言ってもよいです。ステュのピアノが本当に素晴らしい。

The Complete Stones #7 / The Rolling Stones (2024 Eternal Grooves)



Tracks:
01. 19th Nervous Breakdown 19回目の神経衰弱
02. Mother's Little Helper
03. Doncha Bother Me 邪魔をするなよ
04. Take It Or Leave It
05. Think
06. Ride On Baby
07. Sittin' On A Fence
08. Sad Day
09. Goin' Hme
10. Looking Tired
11. Stu-Ball
12. Think (Chris Farlowe)
13. Out Of Time
14. Lady Jane
15. Flight 505
16. High And Dry
17. It's Not Easy
18. I Am Waiting

Personnel:
Mick Jaggar : vocal, harmonica, tambourine
Keith Richards : guitar, chorus, fuzz bass
Brian Jones : guitar, harpsichord, bells, marimba, harmonica, dulcimer
Bill Wyman : bass
Charlie Watts : drums
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Ian Stewart : piano
Jack Nitzsche : piano, percussion, organ, harpsichord
Tony Meehan : drums
Chris Farlowe : vocal