AACMは1965年に創立された「創造的ミュージシャンの進歩のための協会」の略称です。その名の通り、創造的なミュージシャンへのサポートを目的とする非営利団体で、多くのミュージシャンが所属しており、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ(AEC)はその代表格です。

 したがって、2015年にAACMの創立50周年を記念して、シカゴ現代美術館にて、「自由の原則:アートと音楽の実験1965年から今」と題するエキジビションが行われた際、AECのメンバーの一人、ロスコー・ミッチェルが呼ばれたことには何の違和感もありません。

 本作品「ベルズ・フォー・ザ・サウス・サイド」は同エキジビションにて行われたロスコー・ミッチェルの演奏を記録したアルバムです。CD2枚組で2時間を超える演奏が収録されています。この時、ミッチェルは74歳、精力的な活動はまだまだ衰えをしりません。

 このライヴで、ミッチェルは4つのトリオを一堂に集めて演奏を行っています。収録された楽曲は、それぞれのトリオでの演奏と、総勢9人のミュージシャンのさまざまな組み合わせによる演奏に分かれており、いろいろな楽しみ方ができる仕掛けになっています。

 さらに面白いことに、MVに見られるようなホールでの演奏の他に、ギャラリーでの演奏も含まれています。このエキジビションでは、通常の展示スペースにAECのステージでお馴染みのパーカッション群が再現されており、それを使った演奏も行われました。

 トリオ1はミッチェルの71歳の誕生日を祝うライヴを機に誕生したトリオで、教鞭をとっていたミルズ・カレッジの同僚二人、木管のジェイムズ・フェイとパーカッションのウィリアム・ウィナントとミッチェルという構成です。本作品では2枚目の3曲目と4曲目を演奏しています。

 トリオ2は友人の紹介で知り合ったというティショーン・ソレイと70年代半ばから演奏を共にしていた金管のヒュー・レイギンにミッチェルというトリオです。このトリオは1枚目の3曲目を演奏しています。ソレイはトロンボーン、ピアノ、ドラム、パーカッションとクレジットされています。

 トリオ3は、一緒に演奏したいと熱烈なメールを送り付けてきたという若いドラマー、キカンジュ・バクーと、これは常連のキーボード奏者クレイグ・タボーンにミッチェルのトリオです。このトリオは1枚目の4曲目で火花飛び散る演奏を聴かせてくれます。

 トリオ4は1970年代半ばから活動を共にしている、ドラムのタニ・タバルとベースのジャリブ・シャヒドにミッチェルというオーソドックスな編成のトリオです。四つのトリオの中ではもっとも安定しているといえるトリオは2枚目の1曲目を演奏しています。

 その他の曲はこれら総勢9名のミュージシャンのうちからさまざまな組み合わせで演奏されています。最後の25分を超える曲は全員参加の楽曲で、最後にメンバー紹介もなされるので、その部分はそれまでとはうってかわってオーソドックスなジャズ演奏が楽しめます。

 ほぼすべての楽曲をミッチェルが作っており、そこの部分を除けば、ミッチェルらしい透徹したサウンドによる緊張感あふれる演奏が堪能できます。現代音楽的なテクスチャーのフリーを貫いたジャズ演奏は素晴らしいです。パーカッションの遊びも見事の一言です。

Bells For The South Side / Roscoe Mitchell (2017 ECM)



Tracks:
(disc one)
01. Spatial Aspects Of The Sound
02. Panoply
03. Prelude To A Rose
04. Dancing In The Canyon
05. EP7849
06. Bells For The South Side
(disc two)
01. Prelude To The Card Game, Cards For Drums, And The Final Hand
02. The Last Chord
03. Six Gongs And Two Woodblocks
04. R509A Twenty B
05. Red Moon In The Sky / Odwalla

Personnel:
Roscoe Mitchell : sopranino, soprano, alto and bass sax, flute, piccolo, bass recorder, percussion
James Fei : sopranino and alto sax, contra alto clarinet, electronics
Hugh Ragin : trumpet, piccolo trumpet
Tyshawn Sorey : trombone, piano, drums, percussion
Craig Taborn : piano, organ, electronics
Jaribu Shahid : double bass, bass guitar, percussion
Wiliam Winant : percussion, tubular bells, glockenspiel, vibraphone, marimba, roto toms, cymbals, bass drum, woodblocks, tympani
Kikanju Baku : drums, percussion
Tani Tabbal : drums, percussion