「終末処理場」は1980年12月に大阪を拠点に活動したインディペンデント・レーベル、アンバランスから発表されたオムニバス・アルバムです。キング・オブ・ノイズと称される非常階段が含まれており、彼らの事実上のファースト・アルバムとされる伝説のアルバムです。

 アンバランスは町田町蔵を擁したINUにいた林直人が1980年に設立したレーベルです。本作品はアンバランスからのアルバムとしては第一弾になります。型番もOUT-1とされています。プレス枚数はわずか200枚ですが、当時のインディーズでは標準的です。

 アンバランスは足かけ3年で閉鎖されてしまい、発表した作品は数少ないものの、私にとってはほぶらきんやUP-メイカー、ヨーラン、さらには非常階段の「蔵六の奇病」など思い出深く、手放したことを後悔した作品が多いです。関西インディーズの星でしたね。

 その林は非常階段のJOJO広重とともに今に至るも活動を続けるアルケミー・レコードを1984年に設立しています。そして、アンバランスの作品の多くはアルケミーから再発されています。めでたいです。本作品も2023年にアルケミーからCDで再発されたものです。

 アルバムはまずNGの5曲から始まります。NGは三人組のバンドで、この時までに3本のカセット作品を発表しており、そこから選曲された5曲がここに収録されています。いわゆる宅録が中心ですが、「人前で演奏した事だってちゃんとある」そうです。

 驚かされるのは歌詞カードが添付されていることです。録音の問題で歌詞がまるで聴きとれないので、実は歌詞にも力を入れていたんだ、と驚いたわけです。NGはノイズに「痴的かつ病的な言葉」で「毒をぬりたくったエレクトロニック民謡」を企図したバンドなのでした。

 続くジュラジュームは宅録に活動をしぼったノイズ・デュオです。とはいえ本作品の翌年に行ったライヴがボートラに収録されました。本作品に「青い大きな弧をえがく水平線 貨物列車 実験観察 世界の広さ 反音楽へのお誘い」と気合が入った言葉を寄せています。

 この二つのバンドはいずれもエレクトロニクスを駆使したいわゆるインダストリアルなサウンドを展開しているのですが、ジュラジュームの方がより王道インダストリアルで、ドームなどの英国勢を彷彿させます。どちらもこの頃の宅録の粒度がぴったりで素敵です。

 B面は非常階段の「腐食のマリィ」一曲です。非常階段のファースト・アルバムはアンバランスからの「蔵六の奇病」で、本作品はその1年半前ですから事実上のファーストと称されるわけです。ここに収録されているのは雑誌ヘヴン主催のイベントでの演奏です。

 普通のロック的なドラムから始まるので驚きますが、やがて非常階段らしいぐちゃぐちゃのノイズに収斂していくので安心です。非常階段は最初から非常階段なのでした。ビジュアル・パフォーマーも加えた7人によるお祭りのような演奏はキング・オブ・ノイズ登場にふさわしい。

 なお、オリジナルには7インチのEP盤がおまけとしてつけられていたそうなのですが、ちょっと調べただけでは正体が分かりませんでした。ボートラはアルバム発表後のライヴなので、それとは違うと思われます。アンバランス全音源のアーカイヴ化が望まれます。

Syumatsusyorijo / Various Artists (1980 アンバランス)



Tracks:

01. Cry Of Nylon
02. Broken '80s
03. Zisatz
04. 見つからない
05. Theme (For Icy B)
<ジュラジューム>
06. 嘆きのつぼ(URN)
07. Radiation-I
08. 行進曲
09. Radiation-II
10. 来たるべき世紀
<非常階段>
11. 腐食のマリィ
(bonus)
12. Radiation Live '81 (ジュラジューム)

Personnel:
NG
Naoqui : noise
Toshitaka : bass
Yukinaga : bass
ジュラジューム
Hatta : synthesizer, rhythm box, noise guitar
Zaitsu : synthesizer, voice
非常階段
Jojo : guitar, voice
Zuke : guitar, voice
Oka : drums, rhythm box
Mikawa : audio generator, Marcoli net tape, organ
Mako : bass, voice
Sumire : synthesizer
Akuma : visual performance