前作「マスター・オブ・リアリティ」を看板にしたワールド・ツアーを終えたブラック・サバスはしばらく休みをとることにしました。デビュー以来ライブにアルバム制作にと働きづめだったサバスです。ここらで休養が必要と判断したのは大変良いことでした。

 充電が完了したサバスが制作したのが本作品「ブラック・サバス4」です。とはいえ、心身が充実した状態で制作されたわけではなさそうです。ドラッグの濫用がバンドをむしばんでおり、制作過程は必ずしも順調であったとはとてもいえないようです。

 しかし、初めてのセルフ・プロデュース作品となる本作品はまたまたブラック・サバスの最高傑作に推す人が多い傑作となりました。ごたごたしていた方が良いアルバムが出来上がる事例はロック界には事欠きません。本作品などもその好例です。

 アルバム・タイトルは極めてシンプルなものですが、もともとはアルバムに収録されている楽曲名「スノウブラインド」が予定されていました。しかし、これはコカインを思わせるとしてレコード会社に却下されています。オカルト関連なら良かったでしょうにね。

 アルバムは、ダウン・テンポの泣きのギターから始まります。「ウィールズ・オブ・コンフュージョン」がそれです。約8分の長尺の曲で組曲形式になっています。いきなりサバス流のヘヴィなサウンドが始まるわけで、ここでもはや傑作であることを確信してしまいます。

 次いで、これまたトニー・アイオミらしいヘヴィなギターのリフを生かした「トゥモロウズ・ドリーム」へと続き、前作と同様なヘヴィ・スタイルで全編を貫くかと思うと、賛否両論を生んだピアノとメロトロンによるバラード曲「チェンジス」が登場します。

 これに続くのは短いインストゥルメンタル曲「FX」です。まるで予期せぬ方向に為替相場が大きく動いた時の焦燥と諦観を表現したかのようなサウンド・スカルプチャーです。作品中で最も不穏な曲は、「チェンジス」以上にサバスの新たな側面を見せてくれます。

 A面の最後はフランク・ザッパ先生が絶賛する「スーパーナート」です。他にもジョン・ボーナムやベックなど名だたるミュージシャンが称賛する名曲で、そのギター・リフはとにかくかっこいい。しかも途中でサンバが出てきたりして一筋縄ではいかない曲です。

 このようにA面だけをみてもかなり音楽の幅が広がった作品です。本作品は、前作にてサバス流のヘヴィメタル・サウンドを確立させたという自信の上に立って、新たな地平を開こうと果敢に挑んだ作品であるといえると思います。スタジオ・ワークにも慣れて来たことだし。

 結果は大成功で、ブラック・サバスの連中は、ドラッグまみれになりながらも、ヘヴィメタルの歴史に刻まれる傑作をものしたのでした。オジー・オズボーンのボーカルも、ヘヴィーなリズム隊も、縦横無尽に走るトニー・アイオミのギターもとにかく充実しています。

 アルバムは当初酷評されていたという嘘のような話もありますが、商業的には大成功しており、チャート的にも英国では8位、米国でも13位と大ヒットです。米国では4作連続ミリオンセラーを達成しています。威圧感を与えるヘヴィなサウンドは人々に求められていたのです。

Black Sabbath 4 / Black Sabbath (1972 Vertigo)



Tracks:
01. Wheels Of Confusion / The Straightener
02. Tomorrow's Dream
03. Changes
04. FX
05. Supernaut
06. Snowblind
07. Cornucopia
08. Laguna Sunrise
09. St. Vitus Dance
10. Under The Sun / Every Day Comes And Goes

Personnel:
Ozzy Osbourne : vocal
Tony Iommi : guitar, piano, mellotron
Geezer Butler : bass, mellotron
Bill Ward : drums, percussion