ここのところウォーのアルバムを立て続けに聴いたせいで、頭の中では常時ウォーのサウンドが鳴り続けています。それだけ中毒性が高いサウンドです。この点では、私の中ではクラウトロックの雄であるカンが素直に隣に同居しています。

 本作品は1976年に発表されたウォーのベスト・アルバム「グレイテスト・ヒッツ」です。彼らのサウンドは後に再評価を繰り返されることから、数多くのベスト盤が編まれることになりますけれども、これがリアルタイムで発表された正真正銘の第一号です。

 収録されているのは出世作となった「オール・デイ・ミュージック」から、この時点での最新作である「仲間よ目を覚ませ」までの4枚のアルバムのシングル曲です。しかも時系列に並んでいるので、極めてオーソドックスなベスト盤であるといえます。

 例外は「デリヴァー・ザ・ワード」に収録されていた「サザン・パート・オブ・テキサス」で、この曲のみシングル・カットされていません。本作品には約半分の長さに編集された形で収録されています。ウォーらしい魅惑のグルーヴの名曲で、かなり人気がある楽曲です。

 加えて一曲新曲が収録されています。アルバムの最後に収録された「サマー」がそれです。この曲は本作品からシングル・カットされて全米7位の大ヒットを記録しました。見事にゴールドディスクに輝いています。AORといってもよい楽曲です。

 レコード会社が違うので仕方がないとはいえ、エリック・バードンとの名曲「スピル・ザ・ワイン」が収録されていない点のみが残念です。いきなり全米3位の大ヒットとなった楽曲で、その後のライヴでも定番の曲ですから、画竜点睛を欠いた感じがしてしまいます。

 しかし、その点を除けば本作品はヒットメイカーとしてのウォーの姿を過不足なく捉えています。それが証拠に2020年になってもブラック・フライデー限定盤としてゴールド・ブロンズ・カラー限定のLPが発売されて人気を博すなどしています。アナログ復権も追い風です。

 それもそのはずで、今でも高く評価される人気曲がてんこ盛りです。穏やかな広がりのある「オール・デイ・ミュージック」に始まり、ダークな「スリッピン・イントゥ・ダークネス」から再びシリアスな「世界はゲットーだ」が来ると、続いては「シスコ・キッド」で盛り上げます。

 「ジプシー・マン」のランニング・グルーヴが続くと、パーティー感覚満載の「ミー・アンド・ベイビー・ブラザー」で盛り上がり、「サザン・パート・オブ・テキサス」の踊る西部劇のようなビートへと続き、レゲエでメッセージを伝える「仲間よ目を覚ませ」が登場します。

 そして真打ち「ロウ・ライダー」です。この曲は極めて現代的です。このビートは凄い。これ一曲でウォーの評価は固まったといってよいでしょう。そして最後は新曲「サマー」。ラテン沼に浸かってまったりとしているかのような曲でクールダウンです。

 ウォーがこれまで繰り出してきたビートの数々はいずれも殿堂入りにふさわしい。これを堪能するにはすべての楽曲を倍の長さにしてほしいところです。本作品はそのエッセンスをまとめて秀逸です。ただし、ウォーのピークはここまでだったというのがいかにも残念です。

Greatest Hits / War (1976 United Artists)



Tracks:
01. All Day Music
02. Slippin' Into Darkness
03. The World Is A Ghetto
04. The Cisco Kid
05. Gypsy Man
06. Me And Baby Brother
07. Southern Part Of Texas
08. Why Can't We Be Frieds?
09. Low Rider
10. Summer

Personnel:
Howard Scott
B.B. Dickerson
Lonnie Jordan
Harold Brown
Papa Dee Allen
Charles Miller
Lee Oskar