始末に困る変形ジャケットです。真ん中をくりぬいて、それを山に組み立てて、海に見立てたジャケットに立てて三次元の風景を現出させる趣向です。まるで、子ども向け雑誌の豪華10大付録のようですが、実際に組み立てた人はいるんでしょうかね。

 PFMの世界向け第二弾「甦る世界」は私とPFMの出会いとなったアルバムです。姉が借りてきたLPをこっそり聴くという、何とも窮屈な聴き方をしたものですから、感動しないわけはありません。そんなわけで、本作品にはややインフレ気味の好印象を持っています。

 前作が成功したPFMは間髪を入れず第二弾の制作に取り掛かります。前作はすでに発表済であった楽曲のリメイクでしたが、今回は新曲で固めました。「幻の映像」を編集盤として除外すれば、本作品はPFMにとって3枚目となるオリジナル・アルバムとなります。

 レコーディングはロンドンで行われています。途中で一度ミラノに戻って、合唱隊などの素材を録音してきたようで、PFMの拠点はイタリアにあり、ということが示されています。彼らにはイタリアを離れて拠点を海外に移す意図はまるでなかった模様です。

 そのためでしょう、少々ややこしいのですが、本作品には英語盤とイタリア語盤の二種類が存在します。それぞれジャケットの色は青と緑ですから区別が容易です。そして、英語盤は前作と同じくキング・クリムゾンの詩人ピート・シンフィールドが歌詞を書いています。

 イタリア語盤はPFMのメンバーによって歌詞が書かれており、これはシンフィールドの歌詞を訳したというわけでもないところが面白いです。そして、発売はむしろイタリア語盤が先で、瞬く間にイタリアのヒットチャートを4位にまで駆け上がりました。

 なお、英語盤は1曲多いです。それはPFMのデビュー曲のリメイクでアルバム・タイトルにもなっている「甦る世界」です。♪ザ・ワールド・ビケイム・ザ・ワーールド!♪のラインからメロトロンがさく裂する流れは鳥肌ものです。これがあるから英語盤が手放せません。

 サウンドは見事にプログレッシブ・ロックの王道です。フラヴィオ・プレーモリのメロトロンやマウロ・パガーニのバイオリンやフルートなどはこれぞプログレッシブ・ロックと酔わせてくれます。新加入の元アレアのパトリック・ジヴァスのベースもプログレ的です。

 PFMに代表されるイタリア勢は英国勢とはリズム感覚が微妙に異なる気がします。より日本に近い感覚です。片山伸氏はライナーノーツにて、それを民謡に近いと表現しています。地中海エスニックは日本人にとって聴きやすいサウンドであることは間違いありません。

 そんなわけで日本でも話題になったPFMは、本作品の翌年には来日公演まで実現させています。売れたとはいってもたかが知れているわけですから、異例のことでしょう。ちなみに2回目の日本公演は2002年のことです。PFMの人気は根強いのです。

 イタリアン・ロックの第一人者である片山伸氏の愛にあふれる解説に後押しもされて、完成度が格段に高まった本作品を私は大好きなのですが、実は「幻の映像」のぎこちなさの残るサウンドにより愛着を覚えています。まあどちらも大好きなわけですが。

The World Became The World / Premiata Forneria Marconi (1974 Manticore)

*2013年8月5日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. The Mountain
02. Just Look Away 通りすぎる人々
03. The World Became The World 甦る世界
04. Four Holes In The Ground 原始への回帰
05. Is My Face On Straight 困惑
06. Have Your Cake And Beat It 望むものすべては得られない

Personnel:
Franco Mussida : guitar, vocal
Flaivio Premoli : keyboards, vocal
Mauro Pagani : violin, flute, vocal
Patrick Djivas : bass, vocal
Franz Di Cioccio : drums, percussion, vocal