私立恵比寿中学待望のアルバム「インディゴ・アワー」です。前作からはベスト・アルバムをはさんで1年9か月ぶりのスタジオ・アルバムです。早いものでエビ中も結成してから15年が経過しました。中学生だったオリジナル・メンバー、真山りかももう27歳です。

 前作からここまでの間に柏木ひなたが卒業し、桜井えま、中村悠菜の二人が加わって、現在のメンバーは10人となりました。これにより活動歴の長い「高学年」が5人、新たに加入した「低学年」が5人という構成になりました。V6のようなものですね。

 加えて、大きいのはエビ中を担当する音楽ディレクターの交代です。本作品は新ディレクターの川崎みるくが担当しています。女性のディレクターは初めてとのことで、この交代によってエビ中の音楽はかなり落ち着いた感じになったように思います。

 10人体制となったエビ中はまず、2023年5月に本作品にも収録されている「kyo-do?」をシングルとして発表します。フルーツ・ジッパーの「わたしの一番かわいいところ」を書いたヤマモトショウの楽曲で、エビ中にしては珍しい可愛らしい楽曲です。

 川崎がかかわったのはその後、恒例の夏のワンマンコンサートの開催に合わせて7月に配信限定EPで発表された「サマー・グリッター」からです。アコギのイントロから始まる曲でトロピカルな雰囲気をもったエビ中にしては珍しい落ち着いた楽曲です。

 続いてアルバムのリード曲が3部作で提示されました。「ブルー・ディジネス」、「クリスタル・ドロップ」、「トウィンクル・ウィンク」です。この三曲はすべて歌詞を佐藤千亜妃が担当しています。佐藤はきのこ帝国を経てソロで活動しているミュージシャンです。

 本作品のコンセプトは「永遠の青春」ということで、エビ中にしては珍しく三部作に同じ作詞者を起用してこのことを明確にしようとしています。このコンセプトは、これまでのエビ中が「永遠の中学生」であったことを考えると大きな変化だといえます。

 「サマー・グリッター」に続き、「ブルー・ディジネス」はサウンド面においても話題を提供しました。世界的に注目を集めるジャージークラブなるサウンドの要素を取り入れているということです。クリーピー・ナッツの「ブリン・バン・ガン・ボーン」などでお馴染みのダンスビートです。

 雑食のエビ中ですから、こうしたビートを取り入れることには何も違和感はありませんが、全体に抑え目の歌唱になっているところがエビ中にしては新しい。はっちゃけた中学生から、多少落ち着いて青春を謳歌する年齢まで成長した姿だといえるでしょう。

 アルバムの冒頭には自己紹介ソング「ノック・ユー・アウト」が出てくるのですが、これを「出席番号の歌」と比べると歴然とします。真山りかはアイドルの在り方について「成長を見守る形から、完成に近いものが好まれるようになったのかしら」と語っています。

 そうなんです。ここでのエビ中はしっかりと楽曲を聴かせる完成形アイドルとなっています。楽曲提供者も作品のコンセプトに合わせて選ばれており、エビ中のコントロール下にあります。はっちゃけたエビ中もよかったですが、これはこれでまた素晴らしい。

Indigo Hour / Shiritsu Ebisu Chugaku (2024 SME)

参照:私立恵比寿中学「indigo hour」メンバー&職員インタビュー|“永遠に中学生”が表現する“永遠の青春”(音楽ナタリー) 



Tracks:
01. Knock You Out!
02. Summer Glitter
03. Blue Dizziness
04. Twinkle Wink
05. Drama Queen
06. Crystal Drop
07. Hello Another World
08. トーキョーズ・ウェイ!
09. Stay Pop
10. Kyo-do?

Personnel:
真山りか、安本彩花、星名美玲、小林歌穂、中山莉子、桜木心菜、小久保柚乃、風見和香、桜井えま、中村悠菜
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Kenny Does, Rico Sato, Hiddie, SNNJ, mashima soshi, 渡辺亮希, Kuboty, 林武蔵、細井涼介、ペンギンス、ヤマモトショウ : arranger
ESME, MORI, BXN, KEEBOMB, YOONSEOK,ヤマモトショウ : produce
小木岳司 : guitar
亜里沙 : chorus
戸沢直希 : bass
FIREHORNS : horns
湯元淳希 : trumpet
川島稔弘 : trombone
ヒロムーチョ : sax