命令調の邦題はよろしくありません。「友達になろうよ」の方がいいです。ドラムのハロルド・ブラウンは、「このアルバムでメッセージを伝えようとしたけれども、軽い形にしたかった」と語っています。「仲間よ目を覚ませ」はその意図からは遠いと思います。

 タイトル曲「仲間よ目を覚ませ」は、宇宙で初めてソ連と米国の宇宙飛行士がランデブーをした時に、NASAが流しました。冷戦真っ只中のことだと思うと、とてもいい感じです。いがみあっていたと思われた者同士でも友だちになれないわけはないでしょう。

 この曲はウォーが日本の野外フェスに出演した際に、客席で始まった喧嘩のせいで開演が遅れた時に閃いた曲だそうです。日本人としては複雑な気持ちです。レゲエのリズムに乗せて、メンバー全員が自分の言葉で同じメロディーを歌っていく見事な構成の名曲です。

 この作品は、前作から2年の間隔をおいて発表されました。このインターバルは過去最長です。メンバーは前作に大いに不満を感じていましたが、それはコロラドの田舎で制作されたことに原因ありと分析した結果、今回はしっかりロスに戻って制作にのぞみました。

 結果、前作を超える大ヒットとなり、ウォーの傑作として自他ともに認める作品ができました。これまでの作品の中では最もラテンの色が濃い。ロスのストリートに戻ってきたら、ヒスパニックのリズムが流れ込んできたというところでしょう。それが傑作を生んだ大きな要因です。

 そして、この作品には、ウォーの代表作として後世の評価が高い「ロウ・ライダー」という名曲が含まれています。タイトル曲同様、シングル・カットされて大ヒットを記録した曲で、後にさまざまなバンドがカバーしています。ラテン・リズムも見事な変な曲です。

 「ロウ・ライダー」とは、シャコタンのことです。車高を低くした改造車を駆る若者は日本にもいましたが、米国にもいました。ホーンのチャールズ・ミラーもその一人で、そんな族のことを歌った曲なので、時代のアンセム的な役割を担っています。

 この曲は45分に及ぶジャム・セッションをプロデューサーのジェリー・ゴールドスタインが編集して仕上がった曲です。こうなると元の45分を聴いてみたくなります。同じリズムが刻まれていくので、陶酔に誘われそうです。ゴールドスタインには勇気をもってほしかった。

 他にも、これまたラテン・リズムが見事で、ブラジルでは一位となった「ハートビート」もいいですし、「リロイズ・ラテン・ラメント」もその名の通り、カーニバルまで出てくるラテン風味満載の組曲です。ウォーにはこうしたラテン音楽が本当に似合います。

 さらに、「ロータス・ブラッサム」や、自殺志願の人を思いとどまらせた「ソー」などのバラード曲や、アルバム・タイトルにしようとジャケット絵のテーマに選んだインスト曲「スマイル・ハッピー」など、捨て曲がありません。充実の楽曲が並ぶ傑作です。

 私も大好きなアルバムですが、少し危惧もありました。楽曲がすっきりまとまっており、「ロウ・ライダー」を除くと、全員が一丸となって繰り出すジャム演奏の雰囲気がやや薄らぎました。こうした充実のアルバムを聴くと不安になるとは何とも悲しい性です。

Why Can't We Be Friends? / War (1975 United Artists)

*2015年9月17日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Don't Let No One Get You Down
02. Lotus Blossom
03. Heartbeat
04. Leroy's Latin Lament (Medley)
a) Lonnie Dreams
b) The Way We Feel
c) La Fiesta
d) Lament
05. Smile Happy
06. So
07. Low Rider
08. In Mazatlan
09. Why Can't We Be Friend?

Personnel:
Howard Scott : guitar, percussion, vocal
B.B. Dickerson : bass, percussion, vocal
Lonnie Jordan : organ, piano, timbales, percussion, vocal
Harold Brown : drums, percussion, vocal
Papa Dee Allen : conga, bongo, percussion, vocal
Charles Miller : clarinet, alto, tenor & baritone sax, percussion, vocal
Lee Oskar : harmonica, percussion, vocal
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Sharone Scott, Milton James, Moses Wheelock : chorus