ついにおとといフライデーのアルバムが発表されました。当初からアルバム完成が目標とされていましたけれども、完成にこぎつけるまでに10年かかりました。ただし、大変残念なことに、目標を達成した今、おとフラは解散してしまうことになりました。潔い幕引きです。

 それにしても10年。これほど活動が続くとは正直思っていませんでした。しかもおとフラの二人が凄いのは、二人とも本業のセクシー女優の世界でもなおトップに君臨していることです。10年も人気を維持するセクシー女優など一昔前には考えられませんでした。

 本作品は「おとといフライデー8年間の軌跡」をたどる、1stにしてベスト・アルバム「OTOTOY FRIDAY」です。実際にはデビューしてから10年たっていますけれども、オリジナル曲でのシングル発表からは8年間ということで、オリジナル曲全10曲がすべて収録されています。

 最初の2年間はサポートするチームも事務所も異なっており、本気度がやや薄かったように感じましたが、オリジナル曲を発表するようになって一気にテンションが上がりました。第一弾となった運命の曲「私ほとんどスカイフィッシュ」は今聴いても全く新鮮な名曲です。

 ここからおとフラのテーマは「ちょっと前衛的」となりました。実際に気鋭のアーティストを楽曲提供者に選び、一癖も二癖もある前衛的なポップを展開していきます。初っ端の「私ほとんどスカイフィッシュ」は高田馬場のジョイ・ディヴィジョンことトリプルファイヤーの楽曲です。

 以降、俳優としても活躍するマキタスポーツ、異色のシンガーソングライターである柴田聡子、ハードコア・フリー・ジャズバンドNATSUMENのアイン、ラップ・ユニットのエンジョイ・ミュージック・クラブ、ジャンク・ディスコ・バンド、ハバナイの浅見北斗などが起用されました。

 アルバム発表の少し前には最後のシングルとなる「幽霊部員」が配信リリースされました。こちらはバクバクドキンのユイが楽曲を提供し、トラックメイカーのイリシット・ツボイがプロデュースしています。私は知りませんでしたが、何やらどちらも凄い人のようです。

 全10曲には1曲だけですが未発表曲もあります。「レモンキャンディー」がそれです。「愛がなんだ」や「ちひろさん」などを手がけた映画監督今泉力哉が梶井基次郎の「檸檬」に着想を得て歌詞を書いたのだそうです。文豪マナティーへのトリビュートでしょうか。

 作曲はDTMユニットのパソコン音楽クラブです。いい感じのレトロなエレクトロ・ポップが疾走しています。おとフラの二人の歌唱は素人っぽさは変らず、妙に洗練されていかないところがこのユニットの個性になっていて、私は大好きです。とてもほっとするいい感じです。

 ボートラには「私ほとんどスカイフィッシュ」のリミックスが収録されました。同曲のリミックス収録はシングルの発表でも恒例になっており、これで4種類目になります。本作品はミツメのナカヤーンによる可愛らしいリミックスです。名曲は色褪せずですね。

 おとフラは、私にとってまるでスカイフィッシュのようでもあり、日本の音楽シーンの教科書のような役目も果たしています。おとフラの楽曲を通じて柴田聡子を始めとするアーティストたちに出会うことができました。できうることならもっと続けて欲しかったのですが。

Ototoy Friday / Ototoy Friday (2024 Trash-Up)



Tracks:
01. 私ほとんどスカイフィッシュ
02. 乙女の炎上
03. もしやこいつはロマンチックのしっぽ
04. いいビーサン
05. 東京
06. ウォーシャンハニー
07. スプリングフィーバー
08. ENIGMA
09. 幽霊部員
10. レモンキャンディー
(bonus)
11. 私ほとんどスカイフィッシュ

Personnel:
紗倉まな
小島みなみ