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本作品はタンジェリン・ドリームの3作目のアルバムです。発売当時はLP2枚組、それぞれの面に1曲ずつが収録されています。「四つの楽章からなるラルゴ」と副題が添えられています。ラルゴとは「きわめて遅くゆったりと」との音楽上の速度標語です。
その名の通り、全4曲すべてがゆったりとしたドローン・サウンドで構成されています。前作ではある程度メロディーやリズムもはっきりしていましたけれども、吹っ切れたのか何なのか、ここでは、やまなし、おちなしの音響世界が構築されています。
さて、タンジェリン・ドリームのメンバーですが、リーダーのエドガー・フローゼ、前作から参加のクリス・フランケに加えて、ピーター・バウマンが加入しました。この三人体制はしばらく続きますから、入れ替わりの激しかったタンジェリンもようやく安定期を迎えました。
なお、前作ではメンバーとしてクレジットされていたスティーヴ・シュローダーはここではゲスト扱いになっています。ゲストには他にポポル・ヴーのフローリアン・フリッケ、さらには4人のチェロ奏者が加わっています。このチェロの持続音がアルバムの重要な要素となっています。
フリッケの参加は特筆される出来事です。当時、ドイツの音楽シーンで、巨大なモーグ・シンセサイザーを持っていたのはフリッケのみでした。この一台のシンセがクラウス・シュルツェに譲られ、さらなる大活躍をします。ここでのフリッケは当然モーグでの参加です。
フローゼの担当楽器は、グリス・ギターとジェネレイター、と記されています。グリッサンド・ギター、すなわちスライド・ギターと発振器ということでしょうか。どちらも持続音に親和性の高い楽器です。この時点ではまだキーボード・トリオとは呼べそうにありません。
一方、フリッケとバウマンはVCS3シンセサイザーとキーボードなどを使っています。前作から登場しているシンセサイザーですけれども、ここではフリッケのモーグとともに前作以上に大きな活躍をしています。タンジェリンといえばシンセサイザーとなってきました。
とはいえ、どれがどの楽器の音なのか判然としません。そもそもサウンド自体が混然一体となっています。ギターの音でさえ溶け込んでいます。全てを溶解したようなサウンドで、禍々しい気配だけが濃厚に立ち上ってきます。瞑想のお供にはぴったりです。
当時の機材は今では信じられないくらい原始的なもので、電子楽器といえどもボタン一つで同じ音が得られるというものではありませんでした。その意味ではここでのサウンドは若者たちが機械と格闘しながら切り開いていった新たな地平なのです。
バウマンに至ってはまだ10代です。こうした若い力に感銘を受けたのでしょう、タンジェリン・ドリームは本作品を発表した年にドイツの音楽誌で最優秀グループに選ばれています。クールなサウンドとは裏腹に熱い情熱が迸っているのでした。
Zeit / Tangerine Dream (1972 Ohr)
*2011年9月11日の記事を書き直しました。
Tracks:
(disc 1)
01. Birth Of Liquid Plejades
02. Nebulous Dawn
(disc 2)
01. Origin Of Supernatural Probabilities
02. Zeit
Personnel:
Edgar Froese : gliss guitar, generator
Chris Franke : VCS3 synthesizer, cymbals, keyboards
Peter Baumann : VCS3 synthesizer, organ, vibraphon
***
Steve Schroyder : organ
Florian Fricke : moog synthesizer
Chriwtian Vallbracht : cello
Jochen von Grumbcow : cello
Hans Joachim Brüne : cello
Johannes Lücke : cello
a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20240423/17/memeren3/88/18/j/o0200019915429586840.jpg">![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240423/17/memeren3/88/18/j/o0200019915429586840.jpg?caw=800)
凄い邦題がついていたはずだと調べてみますと、「われら、時の深遠より叫びぬ!」という素晴らしいタイトルがヒットしました。原題の「ツァイト」、すなわち「時」をしっかりと入れ込んだ見事なタイトルだと思います。単に「時」とすると座りが悪いでしょうし。![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240423/17/memeren3/88/18/j/o0200019915429586840.jpg?caw=800)
本作品はタンジェリン・ドリームの3作目のアルバムです。発売当時はLP2枚組、それぞれの面に1曲ずつが収録されています。「四つの楽章からなるラルゴ」と副題が添えられています。ラルゴとは「きわめて遅くゆったりと」との音楽上の速度標語です。
その名の通り、全4曲すべてがゆったりとしたドローン・サウンドで構成されています。前作ではある程度メロディーやリズムもはっきりしていましたけれども、吹っ切れたのか何なのか、ここでは、やまなし、おちなしの音響世界が構築されています。
さて、タンジェリン・ドリームのメンバーですが、リーダーのエドガー・フローゼ、前作から参加のクリス・フランケに加えて、ピーター・バウマンが加入しました。この三人体制はしばらく続きますから、入れ替わりの激しかったタンジェリンもようやく安定期を迎えました。
なお、前作ではメンバーとしてクレジットされていたスティーヴ・シュローダーはここではゲスト扱いになっています。ゲストには他にポポル・ヴーのフローリアン・フリッケ、さらには4人のチェロ奏者が加わっています。このチェロの持続音がアルバムの重要な要素となっています。
フリッケの参加は特筆される出来事です。当時、ドイツの音楽シーンで、巨大なモーグ・シンセサイザーを持っていたのはフリッケのみでした。この一台のシンセがクラウス・シュルツェに譲られ、さらなる大活躍をします。ここでのフリッケは当然モーグでの参加です。
フローゼの担当楽器は、グリス・ギターとジェネレイター、と記されています。グリッサンド・ギター、すなわちスライド・ギターと発振器ということでしょうか。どちらも持続音に親和性の高い楽器です。この時点ではまだキーボード・トリオとは呼べそうにありません。
一方、フリッケとバウマンはVCS3シンセサイザーとキーボードなどを使っています。前作から登場しているシンセサイザーですけれども、ここではフリッケのモーグとともに前作以上に大きな活躍をしています。タンジェリンといえばシンセサイザーとなってきました。
とはいえ、どれがどの楽器の音なのか判然としません。そもそもサウンド自体が混然一体となっています。ギターの音でさえ溶け込んでいます。全てを溶解したようなサウンドで、禍々しい気配だけが濃厚に立ち上ってきます。瞑想のお供にはぴったりです。
当時の機材は今では信じられないくらい原始的なもので、電子楽器といえどもボタン一つで同じ音が得られるというものではありませんでした。その意味ではここでのサウンドは若者たちが機械と格闘しながら切り開いていった新たな地平なのです。
バウマンに至ってはまだ10代です。こうした若い力に感銘を受けたのでしょう、タンジェリン・ドリームは本作品を発表した年にドイツの音楽誌で最優秀グループに選ばれています。クールなサウンドとは裏腹に熱い情熱が迸っているのでした。
Zeit / Tangerine Dream (1972 Ohr)
*2011年9月11日の記事を書き直しました。
Tracks:
(disc 1)
01. Birth Of Liquid Plejades
02. Nebulous Dawn
(disc 2)
01. Origin Of Supernatural Probabilities
02. Zeit
Personnel:
Edgar Froese : gliss guitar, generator
Chris Franke : VCS3 synthesizer, cymbals, keyboards
Peter Baumann : VCS3 synthesizer, organ, vibraphon
***
Steve Schroyder : organ
Florian Fricke : moog synthesizer
Chriwtian Vallbracht : cello
Jochen von Grumbcow : cello
Hans Joachim Brüne : cello
Johannes Lücke : cello