ついにディープ・パープルが再結成しました。本作品は1975年の「カム・テイスト・ザ・バンド」以来、実に9年ぶりのアルバム「パーフェクト・ストレンジャーズ」です。ラインナップは第二期ですから、「紫の肖像」以来、11年ぶりの作品ということになります。

 1984年頃はアメリカを中心にヘヴィ・メタルのブームが起こっていましたから、本家というか元祖というか、いずれにせよ老舗バンドの復活は大いに歓迎されました。そんなわけで大概そこそこにとどまるロック・バンドの再結成にしては異例の成功を収めました。

 本作品を発表した後には大々的なツアーを行っています。新作も好調な売れ行きでしたけれども、ここは再結成組の強さで、その集客力は圧倒的なものがあり、1985年の全米ツアーではブルース・スプリングスティーンに次ぐ興行収入をたたき出したそうです。

 しかし、かなり強引な再結成です。ここに集ったメンバーはいずれも他のバンドで活躍していました。リッチー・ブラックモアとロジャー・グローヴァーはレインボー、ジョン・ロードはホワイトスネイク、イアン・ギランはブラック・サバス、イアン・ペイスはゲイリー・ムーア・バンド。

 このため、それぞれのバンドにご迷惑をおかけしてしまっています。憤慨したのは第三期メンバーにしてホワイトスネイクを率いていたデヴィッド・カヴァーデルです。金のための再結成だと怒り心頭。ここで一念発起したホワイトスネイクはパープル以上の成功を収めます。

 あいかわらず身辺事情がかまびすしいのですが、アルバムはすかっとした力作です。針を下ろすと、まずは期待をふくらませるイントロに導かれてシングル・カットされた「ノッキング・アット・ユア・バック・ドア」が流れてきます。これは憎い仕掛けです。思わず胸が躍りました。

 ブラックモアとグローヴァーがいるためにレインボー寄りになるのではないかと噂されていましたが、このアルバムのサウンドはまごうことなきディープ・パープルです。一気にタイムスリップしてしまいますが、しっかりと新しくもなっているという再結成の手本のようなサウンドです。

 ブラックモアのギターもレインボーとは少し印象が異なります。華麗な速弾きは登場しますが、より下腹に響くどっしりとした音になっています。犬猿の仲のギランのボーカルとも実に相性がよい。ロードのオルガンも控えめながらいい味を醸しています。

 私の個人史ですが、初めてヘヴィ・メタルという言葉を耳にしたのは、TV番組で見かけたイアン・ギランのインタビューでした。1977年頃のことで、「俺の音楽はハード・ロックよりも重い、ヘヴィ・メタルと呼んでくれ」というような発言をしていたうろ覚えの記憶があります。

 そのため、ギランの声を聴くと、どうしてもこれがヘヴィ・メタルだと思ってしまいます。本作品などはその典型で、金属的な質感のサウンドとほどよいダークなリフがあいまってヘヴィ・メタルを感じます。満を持しての再結成だけのことはあり、本家の凄味があります。

 楽曲も表題曲を含むシングル曲2曲や、「バーン」タイプの「ア・ジプシーズ・キッス」など充実しています。CDとカセットのみの「ノット・リスポンシブル」の異質感もいい。ただ、リマスター時に収録された「サン・オブ・アレリック」のみはいい曲ですが、本作品には似合いません。

Perfect Stranger / Deep Purple (1984 Polydor)



Tracks:
01. Knocking At Your Back Door
02. Under The Gun
03. Nobody's Home
04. Mean Streak
05. Perfect Strangers
06. A Gypsy's Kiss
07. Wasted Sunsets
08. Hungry Daze
09. Not Responsible
(bonus)
10. Son Of Alerik

Personnel:
Ian Gillan : vocal
Ritchie Blackmore : guitar
Jon Lord : organ, keyboards
Roger Glover : bass, synthesizer
Ian Paice : drums