レインボーの6枚目のスタジオ・アルバム「闇からの一撃」です。今回も人事異動がありました。キーボードのドン・エイリーが脱退し、後任にはデイブ・ローゼンサルがオーディションで選ばれました。ローゼンサルは後にビリー・ジョエルのバンドで長く活動することになります。

 それにしても6枚ものアルバムを発表しておいて、同一メンバーによる作品が全くないというのも凄い話です。多くのミュージシャンがレインボーを通過したわけですが、この人々はいずれも後に活躍しますから、ロック界への人材供給という面でも再評価されるべきですね。

 邦題は「闇からの一撃」となりましたが、原題は「目と目の間を直撃」といった意味です。何でもリッチー・ブラックモアがジェフ・ベックと飲んでいた時に、ベックがジミ・ヘンドリクスのギターをこの表現で形容したのだそうです。真っ向から脳髄を直撃するギターです。

 本作品は前作を踏襲して大変ポップな作品になりました。キャッチーなヘヴィ・メタル・サウンドはパワー・ポップといってもよい仕上がりです。巷間では、当時スタジアム級の人気を誇ったフォリナーとよく比較されます。レインボーがフォリナーになりたかった一枚などなど。

 それほどヒット・チャートと親和性の高いサウンドです。英国や日本では当然のようにトップ10入りしており、問題の全米チャートでも30位とレインボーとしての最高位を記録しています。ブラックモアは満足していないでしょうが、まずまずの成功を収めました。

 しかし、レインボーのコアなファンの間ではあいかわらず評判が悪く、駄作だとの定評があります。面白いのは、駄作との表現は、一様に「駄作だと言われるけれども、私はそうは思わない」という形で使われます。真っ向から「駄作だ」と目と目の間を射貫く人はいません。

 私もこの作品を突き抜けた傑作とまでいうつもりはありませんが、駄作かと言われると、「そんなことはないだろう」と反論してしまいます。レインボー・ファンの方々と概ね意見は一致します。前作とベクトルの向きは同じで、よりその方向に純化されてきました。

 前作で衝撃のデビューを飾ったボーカルのジョー・リン・ターナーですが、前作の場合は制作途中からの参加でした。その意味では本作品が本格的なデビューだともいえます。曲作りにも全面的に参加しています。彼の明るい歌声は演奏にキラキラ感をもたらしています。

 そんなターナーですが、本作品で一番人気が高いのはシリアスなタッチの「ストーン・コールド」だと言いますから面白いです。「ハイウェイ・スター」のような「デス・アレイ・ドライバー」や、様式美楽曲「アイズ・オブ・ファイヤー」などを抑えての一番人気です。

 それにしてもことレインボーに関してはどれが傑作でどれが駄作かという議論がかまびすしいです。結局は不毛な議論ですが、これが楽しい。こういうことを真剣に議論してこそのファン道です。全作でメンバーが異なるレインボーの場合は議論の材料が多くてより楽しい。

 この作品では、ロニー・ジェイムス・ディオやグラハム・ボネットが歌っていたら、という問いは成立しないでしょうが、コージー・パウエルが叩いていたらという議論は成立しそうです。フォリナーにはなりそこないましたが、愛すべきレインボー作品にはなりました。

Straight Between The Eyes / Rainbow (1982 Polydor)



Tracks:
01. Death Alley Driver
02. Stone Cold
03. Bring On The Night (Dream Chaser)
04. Tite Squeeze
05. Tearin' Out My Heart
06. Power
07. Miss Mistreated
08. Rock Fever
09. Eyes Of Fire

Personnel:
Ritchie Blackmore : guitar
Roger Glover : bass
Joe Lynn Turner : vocal
Bobby Rondinelli : drums
David Rosenthal : keyboards
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François Dompierre : conductor
Raymond Dessaint : orchestra lead