お家騒動直後、第三期ディープ・パープルのお目見えです。第二期は、イアン・ギランとリッチー・ブラックモアの確執で継続不能となり、ギランは早々と脱退宣言をします。面白いのは、ブラックモアも辞めると言いだしたことです。さすがはお家騒動の帝王らしい話です。

 みんなでブラックモアを説得すると、残留の条件としてベースのロジャー・グローヴァーが辞めさせられることになりました。シン・リジーのフィル・ライノットを入れたかった、作曲を独占したかった、もっとブルースよりのベースが欲しかった、真相は闇の中です。

 代わりに加入したのは、まず、ベースのグレン・ヒューズ。この人はボーカルもとれる人で、トラピーズというバンドでそこそこ成功していました。ボーカルには、フリーのポール・ロジャースを入れたかったそうですが、さすがにそれはかないませんでした。

 ボーカルがなかなか決まらず、スーパースターなのに新聞広告まで出しました。記事を見た人はびっくりしたでしょうね。結局、当時ほぼ無名のセミプロ、デヴィッド・カヴァーデルが抜擢されます。こちらはシンデレラ・ストーリーです。ショップ店員だったそうですから。

 そして、満を持して発表されたのがこのアルバムです。とてもカッコいい作品です。私がリアル・タイムで知っているのは、このアルバムからですから、思い入れも強いです。特にタイトル曲は素晴らしい。リフもカッコいいですが、ギターとオルガンのソロが凄い。

 改めて聴くと、とんつくとんつく鳴るドラムがちょっと残念ですけれども、パープルの様式美が極限にまで発揮された名曲だと思います。ただ、これまでに比べると、ファンキーな感じもします。そこがヒューズとカヴァーデルの持ち味でもあるのでしょう。

 バンドの主導権は完全にリッチー・ブラックモアの手に握られたようです。人事異動を繰り返して、権力を掌握するというサラリーマンの鑑のような人ですね。あまりお友達にはなりたくない人ですが、出世を考えている人は研究してみるのもよいでしょう。

 ブラックモアは、よりブルース寄りの音を求めていたということです。後にポップになったり、トラッドっぽくなったりする人ですから、ちょっと意外な気もしないではありません。このあたりも実はレッド・ツェッペリンへの対抗意識があったのかもしれません。

 「バーン」推しの中学生だった私に、ちょっと大人ぶった同級生Y君が、「いや、『セイル・アウェイ』こそが一番だ」とふかしていたのを思い出しました。もっとブルース臭い「ミストリーティッド」じゃないところがご愛嬌。みんな洋楽に目覚めて有頂天だった可愛い中学生でした。

 グレン・ヒューズもボーカルをとっているので、厚みが増しました。そして、ジョン・ロードはタイトル曲のオルガンもいいですが、全体では彼のシンセサイザーが目立っています。ヒューズのベースはよりファンキーなのですが、第二期に比べると落ち着いた気がします。

 この作品はメンバー交代直後の作品ですから、特別にフレッシュな気合を感じます。堂々とした中にも初々しい魅力に満ちています。リフやメロディーを中心とする様式美に世界からは少しずれつつあるのですが、ハード・ロック作品として完成度の高い傑作だと思います。

Burn / Deep Purple (1974 Purple)

*2014年6月17日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Burn 紫の炎
02. Might Just Take Your Life
03. Lay Down, Stay Down
04. Sail Away
05. You Fool No One
06. What's Goin' On Here
07. Mistreated
08. "A" 200

Personnel:
Ritchie Blackmore : guitar
David Coverdale : vocal
Glenn Hughes : bass, vocal
Jon Lord :keyboards
Ian Paice : drums