「何様のつもりだ」という常套句にひねりを加えて、自分たちに問いを向けるとは意味深です。ディープ・パープルの苦悩が表れているようにも思います。しかし、邦題はそんなこととは関係なく、「紫の肖像」とされました。こちらの方がかっこいいですね。

 第一期ディープ・パープルもわずかに2年くらいの命でしたが、第二期もほんの4年足らずの短命に終わってしまいます。この作品は第二期の最後のアルバムです。あまり人気のない作品ですけれども、イギリスで4位、アメリカで15位と健闘しています。

 ディープ・パープルのことを書こうとすると、どうしてもメンバー間の確執の話に言及することになってしまいます。残念なことですけれども仕方がありません。本人たちもいろいろと発言していますから、われわれもついついわいわい語ってしまいます。

 この作品の制作時には、すでにボーカルのイアン・ギランとギターのリッチー・ブラックモアとの間の溝が広がるだけ広がっていました。そのため、レコーディングの現場に二人が揃うことはほとんどなかったそうです。ギランによると忙しすぎたことが原因だとのことですが。

 かなり徹底していたため、初期から彼らを支えてきたエンジニアのマーティン・バーチなどは、確執がそこまで深いとは気付かなかったとのこと。バンドの先行きも見えたということで、ブラックモアはアイデアを思いついても次のプロジェクトのためにとっておいたそうです。

 ギランは、「バンドはもっとプログレッシブであるべきだ」と考えていたそうで、ハード・ロックの様式美の世界に不満を抱いていた様子です。「ファイアボール」が好きなんですね。それで、このアルバムにはブルース全開のトラックなどを入れ込んで嬉しそうです。

 全般にブラックモアがバリバリのソロを聴かせる展開が乏しいです。何と言っても、次にとっておいてるわけですからね。代わって元気なのはジョン・ロードです。オルガンにとどまらず、シンセサイザーなども駆使してキーボードによるソロをばりばり聴かせています。

 というわけで、今回は「ファイアボール」的なバラエティー豊かな展開です。「イン・ロック」&「マシン・ヘッド」組と好対照だと言えるでしょう。一作おきにバンドの勢力図を反映して、アルバムの表情が変わっていくというのは面白いものです。

 しばしば、このアルバムの代表曲は「ウーマン・フロム・トーキョー」だと言われます。ディープ・パープルのイメージにぴったりの、ストレートなハード・ロックで、まだまだ西洋コンプレックスが強かった日本人は東京のことを歌ってくれていると喜んだものです。

 しかし、アルバムを代表するという感じはありません。むしろB面のブルース曲あたりが典型的です。彼らの他のアルバムからは際立っています。彼らの場合、あまりメンバー間で打ち合わせをすることなく作ったら、様式美の世界にならないというのが面白いところです。

 それでも、バラバラで作っても水準以上の作品が出来てくるところが凄いです。やっぱりディープ・パープルは1+1=2の人たちなんでしょうね。3にはならない。それぞれの1が大きかったということで、やはりメンバー選びは重要だという教訓です。

Who Do We Think We Are / Deep Purple (1973 Purple)

*2014年6月15日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Woman From Tokyo
02. Mary Long
03. Super Trouper
04. Smooth Dancer
05. Rat Bat Blue
06. Place In Line
07. Our Lady

Personnel:
Ritchie Blackmore : guitar
Ian Gillan : vocal
Roger Glover : bass
Jon Lord : keyboards
Ian Paice : drums, percussion