ブリリアント・グリーンは私のJポップ認識を改めさせてくれたバンドです。テレビのチャート番組で大ヒット曲「冷たい花」のMVを何度も見ているうちに、ふと演奏に耳を傾けている自分に気がつきました。たゆたうようなリズムにギターのきらきら音がからむサビの部分です。

 少なくとも1990年代までのJポップは歌謡曲の流れを受けてとにかく歌中心でした。カラオケの影響も強いでしょう。多くの曲は歌と伴奏でできていて、印象的なリフやギターソロなども多くは前奏や間奏、後奏で入るいわば合いの手のようなものでした。

 要するに演奏に重きが置かれていない。そんな時代に「冷たい花」です。演奏と歌とすべてが一体となって曲ができています。練りに練って組み立てられた曲であることがよく分かります。ほんのちょっとしたサウンドにまで耳を奪われる音楽でした。

 考えてみれば洋楽では至極当たり前です。ブリリアント・グリーンはまさにブリティッシュ・ロック系統の洋楽テイストを色濃く打ち出したバンドなのでした。それが証拠に「冷たい花」の出だしはオアシスのようですし、ギター・ソロはスウェードっぽい。

 ブリリアント・グリーンは「冷たい花」で紅白歌合戦に出場したのですが、これはかわいそうでした。当時の紅白は「歌」合戦なので伴奏へのリスペクトがまるで足りません。バンドを連れてくるなよが本音だった頃です。思いっきり演奏の音量を絞られて名曲が台無しでした。

 紅白規格に合わないブリリアント・グリーンを眺めながら、さまざまな思いが交錯したのでした。今では紅白歌合戦も進歩したと思いますけれども、あいかわらず秒単位で時間を管理するやり方はどうかと思います。いや、ボカロには適したやり方かも...。

 閑話休題。本作品はブリリアント・グリーンのセルフ・タイトルのデビュー・アルバムです。いきなりミリオン・セラーとなりましたし、シングル・カットされた二曲「冷たい花」と「愛のある場所」はシングル・チャートを制しています。デビュー作にして頂点を極めました。

 シングル二曲はもちろん日本語による歌詞ですが、他の曲はほとんど英語による歌詞です。基本的にはボーカルの川瀬智子が書いています。ELTやマイラバ、ドリカムなどと同じトリオ編成だっただけに、差別化を図ったのかもしれませんね。知らんけど。

 サウンドも練り上げられたシングル二曲に比べると、英語詞による他の楽曲は若干アマチュアっぽい感じがしてしまいます。もちろんこれがデビュー作ですから、それまでの彼らは京都のアマチュア・バンドだったわけで、これはおかしくもなんともありません。

 後の彼らのサウンドを思い浮かべると、このアマチュアっぽさがむしろ貴重です。大きな輝きを秘めた原石の魅力というのでしょうか。リーダーの奥田俊作はかなりマニアっぽい人のようでしたから、まだ磨き足りないところで出してしまったような感じもあります。

 そんな意味でもとても気になったアルバムです。洋楽マニアの奥田にはこのままサウンドを磨き続けてほしいと思いましたが、アンディ・パートリッジのようになったりしないかなと一抹の不安も感じたアルバムでした。結局、そこは川瀬トミーがバランスをとったわけですが。

The Brilliant Green / The Brilliant Green
(1998 ソニー)

*2013年1月3日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. I'm In Heaven
02. 冷たい花
03. You & I
04. Always And Always
05. Stand By
06. Magic Place
07. "I"
08. Baby London Star
09. There Will Be Love Again -愛のある場所ー
10. Rock'n Roll

Personnel:
川瀬智子 : vocal
松井亮 : guitar
奥田俊作 : bass, chorus
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渡嘉敷祐一、佐野康夫、田中一光 : drums
笹路正徳、伊藤隆博 : keyboards
川瀬正人、三沢またろう : percussion
横山剛 : manipulation
篠崎正嗣ストリングス