フランク・ザッパ先生の映像作品はなかなか理解が難しいものが多かったのですが、ついにライブの模様を中心に収めた分かりやすい作品を作ってくれました。それがこの「ベイビー・スネイクス」です。ブルース・ビックフォードの恐ろしい粘土アニメもここでは盛り上げ役です。

 この作品はそのビデオのサウンドトラックです。音源は1977年10月から1978年4月のツアーからまとめられたもので、映像の中心は1977年にニューヨークのパラディアム・シアターで行われたハロウィーン・ライブでした。なお、このライブは後に完全版が発表されます。

 この時のザッパ・バンドは名作「シーク・ヤブーティ」を作り上げたメンバーで、数あるザッパ・バンドの頂点の一つといえます。演奏技術ばかりではなく、ステージでのおふざけも面白いバンドでしたから、こうして映像作品になるのも必然だったことでしょう。

 メンバーのうち、演奏中に紹介されているのは、ベースのパトリック・オハーン、ギターのエイドリアン・ブリュー、キーボードのトミー・マースとピーター・ウルフ、ドラムのテリー・ボジオ、パーカッションのエド・マンです。さらにブックレットにはロイ・エストラーダの名前もあります。

 バンドが演奏する曲には、今となっては新しい楽曲はありませんけれども、本作品発表当時は「パンキーズ・ウィップス」が初出でした。今では「ザッパ『雷舞』イン・ニューヨーク」に収録されていますが、この頃は内容に問題ありとして削除されていたのでした。

 「パンキーズ・ウィップス」の内容は、アイドル扱いされていた新人バンド、エンジェルのギタリスト、パンキー・メドウスにボジオが欲情して大暴れするというまことに下世話なものです。「ティティーズ・アンド・ビール」とともにボジオの渾身の変態ぶりが爽やかです。

 その「ティティーズ・アンド・ビアー」で、ボジオの扮する悪魔に対して、先生が♪自分は地獄を経験してる。ワーナー・ブラザーズと8年間も契約してたんだ♪と語っているように、当時はワーナーともめにもめていて、自由に作品が発表できていない時期だったのでした。

 そんなことを考えると、このメンバーでの作品は実に貴重だといえます。そう簡単にライブに足を運べない多くのファンの渇望を満たす作品です。映像でボジオの変態ぶりを確認させてくれただけでも価値があるというものです。さすがは先生、分かってらっしゃいます。

 オリジナルはピクチャー・ディスクで発売されました。ビニール盤でも盤面に写真を印刷することが出来たのです。一般に音質を犠牲にすると言われていますが、オリジナルを聴いた人によれば、まるでそんなことはなかったそうです。さすがは先生です。

 本作品は発売されているDVDを見るとなおのこと面白いわけですけれども、音楽だけ聴いてももちろんかっこいいです。ただし、アルバムにはギター・ソロが最後の曲でようやく出てくるに過ぎないので、先生のギターが堪能できない恨みはあります。

 むしろ、ボジオを筆頭とするメンバーの悪ふざけを前面に押し出したパフォーマンス中心の構成になっています。映像が主というわけです。それでもなお、音だけでも凄いところがさすがは先生。人気楽曲をおし並べた当時の楽しげなライブの模様が十分に伝わります。

Baby Snakes / Frank Zappa (1983 Barking Pumpkin)

*2013年9月21日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Intro Rap
02. Baby Snakes
03. Titties 'n' Beer
04. The Black Page #2
05. Jones Crusher
06. Disco Boy
07. Dinah Moe Humm
08. Punky's Whips

Personnel:
Frank Zappa
Terry Bozzio
Roy Estrada
Adrian Belew
Ed Mann
Patrick O'Hearn
Tommy Mars
Peter Wolf