快挙です。ザ・スターリンが1981年4月19日に京都のライヴハウス、磔で行ったライヴがCD化されました。アルバム・タイトルはイベント名「Answer81」とされ、対バンだった非常階段他の演奏をVOL1、スターリンをVOL2として別々にリリースされました。

 この時期のパンク・シーンは関西が熱かった。東京は東京ロッカーズを中心とした昭和の香りが濃厚なシーンが盛り上がっていましたが、関西はノー・ウェイヴと冠されることが多かったように東京のシーンに比べるとずっと過激、というかパンク的でした。

 当時、東京に住んでいた私は関西のインディーズ・レーベルから発表されるノー・ウェイヴな音源の数々を聴きながら、京都の磔などで行われるライヴのニュースを羨望をもって眺めていたものです。東京よりも業界から遠く、自由がみなぎっていたように感じていたのです。

 ザ・スターリンは東京を拠点に活動していましたけれども、どこか超然とした雰囲気がありました。じゃがたらも超然としていましたけれども、スターリンとはベクトルが違っていました。こちらはよりストレートにパンクの精神を具現化していたように思います。

 そんなスターリンが同じ変態バンドの括りに入れられていたキング・オブ・ノイズこと非常階段とイベントを共にするのですからこれは凄い。しかも、この日は非常階段がぐちゃぐちゃにしたステージをスターリンが嬉々として転げまわりながら歌うという垂涎のステージです。

 この頃のスターリンはといえば、ミニ・アルバム「スターリニズム」を発表したばかりの頃で、伝説のデビュー・アルバムはまだ発表されていません。マスコミではその過激なステージが話題になっていましたが、まだまだ目にした人は少なかったはずです。

 私は「スターリニズム」でスターリンを初めて聴きましたが、ライヴを見に行ったのはメジャー・デビュー後のことです。これはこれで十分に面白かったのですが、やはりデビュー前のこころおきなくパンクしている頃のスターリンを見てみたかったという思いは強いです。

 それがここに再現されているのですから感涙ものです。バンドはミチロウの他、初期メンバーであるギターの金子あつし、ベースのシンタロウ、ドラムのイヌイジュンで4名。特に金子はこの後すぐに脱退してしまいますから、ここでの演奏は貴重です。

 ライヴでは約30分にわたり15曲がノンストップで演奏されています。スターリン・ファンにはお馴染みの曲が多いですが、「血の海 Want You」と「お前まじかだ(ブタのケツ)」はスターリンとしては初の公式リリースです。全体がひと塊なのであまりぴんときませんが、貴重です。

 非常階段のJOJO広重が収蔵していたテープからのCD化で、必ずしも音質はグレイトではありませんけれども、それもまたこのエネルギーの塊には相応しい。最初から最後までテンション・マックスで繰り広げられる地獄絵巻。むやみに興奮してしまいます。

 アナログの極みとでもいいましょうか、エレクトロニクスがどこまで発達しようとも、汗の飛び散る人力演奏は不滅です。衝動を昇華させた四人の演奏はとにかくパンクでハードコアです。この衝動に自身がからめとられていないミチロウがとにかく凄い。偉大なバンドでした。

Answer 81 1981.4.19 Vol.2 / The Stalin (2023 Alchemy)

動画は見当たりません。まあそれも当然ですか。悪しからず。

Tracks:
01. 豚に真珠
02. 猟奇ハンター
03. GASS
04. 血の海 Want You (飢餓々々帰郷)
05. コルホーズの玉ネギ畑
06. Bird
07. 電動コケシ
08. アーチスト
09. サル
10. 解剖室
11. 冷蔵庫
12. Light My Fire
13. お前まじかだ(ブタのケツ)
14. 暗いネ落ち込んだ(欲情)
15. 撲殺

Personnel:
遠藤ミチロウ : vocal
杉山シンタロウ : bass
金子あつし : guitar
乾純 : drums