自主規制バージョン!
 ずいぶんと攻めたジャケットです。カラー版もありますけれども、手元の再発盤はモノクロ写真になっています。このジャケットからは悪魔系ヘヴィ・メタルかハードコアか、そんなサウンドを想像してしまいますけれども、スーパートランプのポップ・サウンドが飛び出します。

 デビュー作がさっぱり売れなかったスーパートランプは早くも方向転換を図ります。その結果として発表されたセカンド・アルバムが本作品「消えない封印」です。見事なタトゥーを入れたジャケットからしても「封印」はないですね。邦題は無用でした。

 本作品でのスーパートランプはバンドの中心を担うリック・デイヴィスとロジャー・ホジソンの二人以外はすべて新しいメンバーです。さまざまな事情による交代劇ですが、もともとが音楽誌の広告で集まったバンドですから、ヒットが出ない状況下では結束も脆いものです。

 二人以外のメンバーは、デビュー作発表直前に加入したフルートとサックスのデイヴ・ウィンスロップ、後にルネッサンスなどにも参加するベースのフランク・ファレル、そしてドラムのケヴィン・カリーです。なんとこの三人が参加しているのは本作品のみです。

 そんなわけで本作品はこのメンバーによる唯一の作品ということになります。スーパートランプは前身バンド時代から離合集散がはなはだしいバンドでしたから、それが癖になってしまっていたのでしょう。その意味ではホジソンが残っただけでも良かったです。

 本作品は前作との連続性が見いだしがたいくらいにサウンドが変化しています。ジャケットには各楽曲に対するバンドの一言コメントが記載されており、その中で「トラヴェルド」に「前作のメランコリー・ムードを唯一継承している曲」とされている通りです。

 冒頭の「ユア・ポッパ・ドント・マインド」などはとてもアメリカンな曲です。誰がこの曲を耳にして、前作がプログレッシブ・ロックと呼ばれていたなどと信じる人がいるでしょうか。続いて「トラヴェルド」が収録されているので、数少ない前作のファンは少しほっとします。

 スーパートランプの作詞作曲クレジットはビートルズのレノン・マッカートニーと同様にデイヴィス・ホジソンとされています。そしてこれまたビートルズ同様にどちらか中心になった方が当該曲でリード・ボーカルをとるスタイルがとられています。

 本作品ではホジソンがボーカルをとる曲は件の「トラヴェルド」と、唯一作曲クレジットがホジソンとファレルになっている「ロージー・ハド・エヴリシング・プランド」、そして最後の大曲「アリーズ」の3曲です。ホジソンの曲はそれでもまだプログレ寄りとなっています。

 一方、デイヴィスは冒頭の一発からしてアメリカンなスタイルですし、ジャズやブルースに影響を受けながらもキャッチーなポップ寄りのロックを展開しています。もともとはデイヴィスのバンドですから、何とかヒットをものしようと試行錯誤を重ねているようです。

 残念ながら本作品もヒットには結びつきませんでした。前作をも下回る結果にバンドはまたまた二人だけが残る結果になっただけでなく、例の大富豪からも見放されてしまったのでした。光る瞬間はいくつもみられる作品でしたから富豪ももう少し辛抱すればよかったのに。

Indelibly Stamped / Supertramp (1971 A&M)



Tracks:
01. Your Poppa Don't Mind
02. Travelled
03. Rosie Had Everything Planned
04. Remember
05. Forever
06. Potter
07. Coming Home To See You
08. Times Have Changed
09. Friend In Need
10. Aries

Personnel:
Rick Davies : piano, organ, vocal, harmonica
Roger Hodgson : guitar, bass, vocal
Dave Winthrop : flute, sax, vocal
Frank Farrell : bass, piano, accordion, chorus
Kevin Currie : percussion, drums