フランク・ザッパ先生の大傑作「シーク・ヤブーティ」です。レコード会社とのごたごたから裁判沙汰になってしまったにもかかわらず、先生はワールド・ツアーを敢行し、さらにこんな大傑作を作り上げてしまいました。LPでは2枚組になっていた大作です。

 世の中はパンクからニュー・ウェーブの時代、古くからいるミュージシャンが目の敵にされていましたが、先生には何の関係もなかったようです。本作品は、自身のザッパ・レーベルからの第一弾として発売され、これまでに世界で200万枚以上を売り上げた最大のヒット作です。

 ツアーの音源を元にスタジオでオーヴァーダブを施して作られています。音源は78年のロンドンにあるハマースミス・オデオンを中心に、ドイツやアメリカのライブから採られています。機材の進歩で、別のライブ音源をつなぎ合わせたりすることも容易になりました。

 この作品には先生がナッシュビルのクラブで発見したというエイドリアン・ブリューが参加しています。大勢の人前で演奏することに慣れていないと言っていたブリューは、ここで女装してステージを動き回るまでに成長しました。その後のブリューの活躍はご存じの通りです。「

 加えて、ドラムはテリー・ボジオ、ベースにパトリック・オハーン。キーボードにトミー・マースとピーター・ウルフ、パーカッションにエド・マンと超強力なおなじみの顔が揃いました。「シーク・ヤブーティ」は比較的小ぶりのこのバンドでの会心の作品です。

 エンジニアにはホワイト・ストライプスやストロークスなど21世紀のアメリカ・ロックを支えるアーティストのプロデュースで有名になるジョー・チッカレリが起用されました。チッカレリの実質的な初仕事で、彼は今でもキャリアをくれたことに対して先生への感謝を忘れません。

 アルバムは、ピーター・フランプトンの「アイム・イン・ユー」のパロディーから始まります。歌詞の検閲反対の急先鋒だった先生は、この曲を聴いておったまげたそうです。アイドルでもあったフランプトンが露骨な歌詞を歌いますから。さっそくパロりました。さすがです。

 そして、二曲目の「フレイクス」はブリューがボブ・ディランの真似をして歌います。これがなかなかなかなか様になっています。アルバムは、その後もパンクっぽい曲やらが細かく続いて飽きさせません。目まぐるしい展開に翻弄されていくのがとても楽しいです。

 お約束のギター・ソロは、「拷問は果てしなく」が元歌の「ラット・トメイゴ」や、「俺が住んでいた小さな家」から「シーク・ヤブーティ・タンゴ」の2曲。アルバム最後の大作「ヨー・ママ」は、♪お前は愚鈍で醜いからお母さんと住んでろ♪と強烈ですがほぼギターの快作です。

 アルバムの白眉は「ボビー・ブラウン」でしょう。学園のスターが、レズビアンのフレディーに調教されて、ゲイになり、SMにはまっていくという大変な歌詞で、アメリカでは放送禁止になりましたが、ヨーロッパでは大ヒット、特に北欧諸国で売れました。私も大好きです。

 また、後のライブでは定番となる「ダンシング・フール」は何とグラミー賞にノミネートされるという快挙も達成しています。本作品は、これまでとは違って、ボーカルが前面に出てきていて、かなり普通にロックっぽいです。ロックな先生ももちろんかっこいいです。

Sheik Yerbouti / Frank Zappa (1979 Zappa)

*2013年1月12日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. I Have Been In You
02. Flakes
03. Broken Hearts Are For Assholes
04. I'm So Cute
05. Jones Crusher
06. What Ever Happened To All The Fun In The World
07. Rat Tomago
08. Wait A Minute
09. Bobby Brown Goes Down
10. Rubber Shirt
11. The Sheik Yerbouti Tango
12. Baby Snakes
13. Trying' To Grow A Chin
14. City Of Tiny Lites
15. Dancin' Fool
16. Jewish Princess
17. Wild Love
18. Yo' Mama

Personnel:
Frank Zappa : lead guitar, vocals
Adrian Belew : rhythm guitar, vocals
Tommy Mars : keyboards, vocals
Peter Wolf : keyboards, butter
Patrick O'Hearn : bass, vocals
Terry Bozzio : drums, vocals
Ed Mann : percussion, vocals
David Ocker : clarinets on Wild Love
Napoleon M. Brock : background vocals
Andre Lewis : background vocals
Randy Thornton : background vocals
Davey Moire : background vocals