前作から約2年ぶりに発表されたスパークスの15枚目のスタジオ・アルバム、「インテリア・デザイン」です。今回は地元ロサンゼルスのスタジオでの録音となっています。久しぶりにロンとラッセルのメイル兄弟がジャケットに登場しない作品です。

 本作品は米国ではファイン・アートなるレーベルから発表されました。調べてみるとこのレーベルはライノ・レコード傘下にスパークスのために作られたレーベルのようです。しかし、ここからは本作品とここからカットされたシングル曲のみのリリースです。

 そうなんです。これまでレーベルを探して右往左往していたスパークスですが、本作品をもってまたレコード契約が終わってしまい、次の作品が発表できるまでに6年間も待たなければなりません。その意味では本作品はスパークスにとって画期となってしまいました。

 ということは本作品も売れなかったということです。米国でも英国でもチャート入りはしておらず、スパークスの苦境はさらに深まったとされています。しかし、ちょっと待って下さい。本作品からのシングル曲は二曲ともビルボードのダンス・チャートではトップ10入りしているんです。

 その二曲とは「ソー・インポータント」と「ジャスト・ガット・バック・フロム・ヘヴン」の2曲です。スパークスらしいキャッチーなダンス・チューンですけれども、ダンス・チャートでトップ10入りしたことなどはレコード会社的には実績にカウントされないということなのでしょうか。

 前作を発表した後、スパークスはしばらくの間続いていたバンド・メンバーにお別れを告げてしまいます。ドラムのデヴィッド・ケンドリクスだけはツアーに同行しましたけれども、ツアーが終わるとケンドリクスもディーヴォのもとに去ってしまいます。

 本作品ではほとんどロンとラッセルのメイル兄弟のみで制作されています。わずかにギターとキーボード、そして女声コーラスにゲストが呼ばれているのみで、その活躍ぶりもあまり目立ちません。プロデュースも兄弟が担当しており、二人だけのスパークスとなりました。

 ドラマー不在ということでビートは機械にゆだねられており、これまで以上にシンセ・ポップ風味が強まっています。発表された1988年といえば、カイリー・ミノーグの「愛が止まらない」などユーロビートが盛り上がっていた時期だったことを思い出させてくれるサウンドです。

 あいかわらず楽曲はポップですし、アレンジもかっこいいのですが、ヒットもしませんでしたし、特に変わったところのない、「ただ出しただけ」になってしまったアルバムとされています。今、聴くと結構いい作品なのですが、難しいものです。

 レコード会社との契約がふらふらしている関係で、本作品は後にさまざまなタイトルがつけられていろいろなレーベルから廉価盤として発売されたことでも知られています。ジャケット写真もさまざまですから、コレクター魂をくすぐる作品でもあります。

 CD化に際しては本作品の目玉の一つ「マドンナ」の仏独西語バージョンがボートラとして追加されました。英語バージョンにそのまま続くのでさすがに4回聴くのはしんどいわけですが、これもまたスパークスらしいです。酷評もされないけれども絶賛もされない。難しい作品です。

Interior Design / Sparks (1988 Fine Art)



Tracks:
01. So Important
02. Just Got Back From Heaven
03. Lots Of Reasons
04. You've Got A Hold Of My Heart
05. Love-O-Rama
06. The Toughest Girl In Town
07. Let's Make Love
08. Stop Me If You've Heard This Before
09. A Walk Down Memory Lane
10. Madonna

Personnel:
Russell Mael : vocal
Ron Mael : keyboards
Spencer Sircombe : guitar
Pamela Sonebrooke : chorus
John Thomas : keyboards