契約がごたごたしていたため、アルバム・デビューできないでいたパーラメントでしたが、モータウンのホランド・ドジャー・ホランド・チームが独立して立ち上げたインヴィクタスからジョージ・クリントンにレコード制作のオファーがあったことから一気に話が進みます。

 クリントンは渡りに船とばかりにこの話に飛び乗り、めでたくパーラメント名義でアルバムを制作することとなりました。なお、プロデューサーのルース・コープランドはモータウンのプロデューサー、ジェフリー・ボウエンの恋人で、この起用が一つの条件だったようです。

 ところで彼らはもともとザ・パーラメンツでしたが、古臭いからとパーラメントに名前を変えています。そもそもは煙草の銘柄から名前をとっただけですから、あまり「議会」といった大そうな意味は考えていなかった模様です。何が違うのか分かりずらい余談でした。

 レコード制作にあたって、ジョージはカントリー&ウェスタンでも何でもやってみようと申し出ており、レーベル側も寛容なことにそれを受け入れています。まあプロデューサー名義もありますからね。その結果として、出来上がった作品は実に何でもありの作品になっています。

 参加メンバーとして、ジャケットにクレジットされているのは、パーラメントのボーカル4人衆、ファジー・ハスキンス、カルヴィン・サイモン、グレイディ・トーマス、レイモンド・デイヴィスにジョージ・クリントンを加えた5人です。典型的なコーラス・グループです。

 ジャケットには10人写っていますので、残りは5人。当然、一足先にアルバム・デビューしたものの基本的にはパーラメントのバック・バンドだったファンカデリックの面々です。この頃にはPファンクを代表するアーティスト、バーニー・ウォーレルも仲間です。

 アルバムはいきなりソウル・アルバムらしからぬギターによるイントロから始まります。これが一旦フェイド・アウトしますから、一体これは何なのかとまずは耳を惹きつけられてしまいます。とてもカッコいいギターなだけに、フェイド・アウトするとびっくりします。

 クリントンの言葉通り、カントリー&ウェスタン調の曲もありますし、ヨーデルが出てくる曲もあり、さらにはクラシック調の曲もあります。基本はサイケなファンク・ロック調だとはいえ、とにかく思いついたことを全部やってみましたという調子です。

 パーラメントはドゥーワップ・グループだったわけで、ボーカル中心のバンドのはずなんですが、一足先にファンカデリックとして人気を博していたこともあって、このアルバムはファンカデリックの作品と言われてもおかしくない仕上がりです。

 レーベル・メイトだった共同プロデューサーのコープランドは2曲の作曲クレジットがある他に、どうやらオペラ調の高音女声ボーカルを担当しているようです。こういう人が参加しているところもクリントンの何でもありな包容力の広さを感じさせます。普通断るでしょうに。

 最盛期のPファンクとは随分違いますが、片鱗はほの見えます。レーベルとは単発契約ですし、長らく入手困難だったために継子扱いされていますが、Pファンク完成前の姿を垣間見ることのできる貴重な作品、ウォーレルのピアノも堪能できるなかなかの作品です。

Osmium / Parliament (1970 Invictus)

*2015年3月30日の記事を書き直しました。

参照:「P-Funk」河内依子(河出書房新社)



Tracks:
01. I Call My Baby Pussycat
02. Put Love In Your Life
03. Little Ole Country Boy
04. Moonshine Heather
05. Oh Lord, Why Lord/Prayer
06. My Automobile
07. Nothing Before Me But Thang
08. Funky Women
09. Livin' The Life
10. The Silent Boatman
(Bonus track)
11. Red Hot Mama
12. Breakdown
13. Come Out In The Rain

Personnel:
George Clinton
Fuzzy Haskins
Calvin Simon
Grady Thomas
Raymond Davis