レッド・ツェッペリンの解散はあまりに突然でした。1980年9月25日にボンゾことジョン・ボーナムが亡くなり、その同じ年の12月に解散が発表されました。メンバーの死によって解散を余儀なくされるというのはあまりに悲しい出来事です。しかも享年わずかに32歳。

 フロントマンではありませんでしたが、ツェッペリン・サウンドの要と言うべきボンゾのドラム抜きのツェッペリンはあり得ない。潔い決断でした。その後、何度か再結成ライブ的なことが行われましたが、公式なリユニオンはありませんでした。ザ・フーとの違いが際立ちます。

 ツェッペリンの巨大さはメンバー個人個人の総和をはるかに超えていたので、ジミー・ペイジとロバート・プラントの両フロントマンにしても、その後、ツェッペリンの奇跡を再現することはできませんでした。ある意味でバンドの理想形といえるバンドでした。

 「コーダ(最終楽章)」と名付けられたこの作品はレコード会社との契約枚数を消化するために未発表曲をまとめて制作されたもので、ツェッペリン最後のスタジオ・アルバムです。各楽曲の録音時期はデビュー時から前作までと彼らの活動期間全部にわたります。

 しかし、さすがにペイジ・リーダーはこれを見事に統一感あふれる作品に仕上げています。録音時期のばらつきなど微塵も感じさせません。このCDにはボートラが4曲入っており、未発表曲としては同じステータスであるにも係わらず、やはり佇まいが違います。

 どの曲もなかなかの力作ですけれども、やや軽めに感じられるからか今一つファンの間では人気がありません。そんな中でも、「モントルーのボンゾ」などは注目です。ボンゾのドラムにエレクトロニクスを少々混ぜたドラム曲で、ボンゾへの愛が感じられる仕様になっています。

 全体にやはりボンゾのドラムは格別だなあと思わせるところがいいです。思えばツェッペリンの豪快伝説のほとんどはボンゾに帰せられていたような印象が残っています。実際にはそうではなかったようですが、とにもかくにも豪快さんでした。

 昔、ミュージック・ライフ誌には「ヒー・セド・シー・セド」という読者によるお遊びコーナーがあって、ミュージシャンを題材にした小話の投稿が掲載されていました。ツェッペリンは横綱だけによくその題材とされていたわけですが、その中でもボンゾは豪快さんキャラでした。

 一方、強く印象に残っているのは、ページ・リーダーのどけちキャラです。どんなエピソードからそんなことになったのかは定かではありませんけれども、ミュージック・ライフ誌の読者の間ではジミー・ペイジは類稀なるけちんぼであるとされていたのでした。

 ともあれ、レッド・ツェッペリンは本当に伝説になってしまいました。このアルバムはその伝説を確認するためにある作品です。公式の未発表曲集はこれのみ。丁寧に仕上げられた作品を最後に、ツェッペリンの伝説は完結したのでした。さすがは横綱。

 余談ですが、私のツェッペリン初体験は本作品にボートラで収録されている、アルバム未収録曲「ヘイ・ヘイ・ホワット・キャン・アイ・ドゥ」でした。プラントの水が滴るようなボーカルに魅了されたのですが、アルバムを聴いた時にはひっくり返りました。

Coda / Led Zeppelin (1982 Swan Song)

*2014年4月25日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. We're Gonna Groove
02. Poor Tom
03. I Can't Quit You Baby 君から離れられない
04. Walter's Walk
05. Ozone Baby
06. Darlene
07. Bonzo'z Montreux モントルーのボンゾ
08. Wearing And Tearing
(bonus)
09. Baby Come On Home
10. Travelling Riverside Blues
11. White Summer / Black Mountain Side
12. Hey Hey What Can I Do

Personnel:
John Bonham : drums, percussion
Robert Plant : vocal, harmonica
Jimmy Page : guitar
John Paul Jones : bass, piano, keyboards