凄まじいまでのジャケット再現度です。日本の紙ジャケ文化はここまできました。私の手元には6種類の紙ジャケが揃っています。6枚買ったわけではなくて、紙ジャケ・ボックスを買ったところ、そのおまけにジャケット5種類がついてきたんです。凄い。

 前作から3年半の時を経てようやく発表されたレッド・ツェッペリンのスタジオ・アルバム「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」です。LPは茶封筒に入れられて中身が見えず、買ってみるまで6種類のジャケットのどれにあたるか分からないという仕掛けになっていました。

 しかし、本作品を前にするとどことなく居心地が悪い気がしてしまいます。このアルバムをなかったことにしている人も多いのではないでしょうか。私も、毎回、これまでchannto
聴いたことがあったかなと思いながら聴いてしまいます。大昔からうちにあるのですけれども。

 それは前作発表後にロバート・プラントのお子さんがなくなり、さらに本作発表の1年後にジョン・ボーナムが亡くなってしまったという事情が大きいです。前作とはずいぶん表情が異なるアルバムですが、そこを突っ込むと不謹慎な気がしてしまいます。

 この作品では、その制作段階で、ジョーンジーことジョン・ポール・ジョーンズがいつもいち早くスタジオ入りしたからとされていますが、彼のキーボードが大きくフィーチャーされており、とてもカラフルな作りとなっています。前作がキーボード・レスでしたから大きな違いです。

 ピアノが活躍したり、サンバのリズムが出てきたり、カントリー&ウェスタンだったり、アダルトなシンセ・ポップだったりとそれはもう多彩な楽曲がつまっています。前作はもちろんのこと、「フィジカル・グラフィティ」と比べても、多彩さの佇まいが異なります。

 アルバムの白眉となっている「オール・マイ・ラヴ」は、プラントが早世した息子さんへの思いを歌ったバラードです。初めて聴いた時にはまるでツェッペリンらしくない曲だと思ったものです。しかし、この曲は名曲です。やはりこれもツェッペリンなのでした。

 ジョーンジーのチープなシンセが何ともいえない味わいを醸し出していて、これが不思議にボンゾのドラムに合うんです。そして、何といってもボーカルです。プラントが情感豊かに歌い上げます。その歌声の魅力たるや、それはもう。一度聴いたら忘れられません。

 この曲が代表となりますが、この作品ではジョーンジーの仕掛けによる多彩な曲調の中で、ボーカル、ドラム、ギターのそれぞれがいつもと異なる環境に置かれながら、それぞれが一味違った魅力を発揮しています。控えめなジミー・ペイジ・リーダーも珍しい。

 そんなわけで本作品はとても面白いアルバムです。横綱は四ツ相撲にも押し相撲にもけたぐりにも猫だましにも対応できるぞとばかりに、四十八手を繰り出しながら、しかも重厚という、結局はレッド・ツェッペリンらしい立派な作品になっています。

 本作品は当然の如く英米で1位となり、日本でも2位と大健闘しています。当時、ツェッペリンはパンクスたちに恐竜扱いされていました。そもそも恐竜はほろんだ後も大人気です。子孫とも言える鳥類は大いに繁栄しているわけで、恐竜扱い上等、というところです。

In Through The Out Door / Led Zeppelin (1979 Swan Song)



Tracks:
01. In The Evening
02. South Bound Saurez
03. Fool In The Rain
04. Hot Dog
05. Carouselambra
06. All My Love
07. I'm Gonna Crawl

Personnel:
John Bonham : drums, percussion
John Paul Jones : bass, keyboards
Jimmy Page : guitar, gizmotron
Robert Plant : vocal
*2014年4月23日の記事を書き直しました。