いよいよスティクスがメジャー・レーベルA&Mに移籍しました。メジャー移籍後初めての作品はその名も「分岐点」です。もっとも原題のエクイノックスは春分、秋分にも使われる天の黄道と赤道の交点のことですから、邦題のようなイメージはありません。

 スティクスのメジャー移籍は実は「レディ」が大ヒットする前に決まっていたのだそうです。そう考えるとウッドゥン・ニッケルにとっては災難ですし、A&Mにとってはこれ以上ない絶妙のタイミングであったということになります。メジャーは運までメジャーでした。

 しかし、さすがはメジャー・レーベルです。スティクスのサウンドはドラスティックに変化しているわけではありませんけれども、サウンド自体がメジャー仕様になっており、ガレージ・バンド的な色彩は一掃されました。みんなが知るスティクスになりました。

 制作はセルフ・プロデュースで、エンジニアリングでサポートするのは初期からスティクスを支えてきたバリー・ムラーツ、そしてスタジオは三作目までを制作したパラゴン・レコーディング・スタジオと、メジャーに移籍したからといって制作陣が代わったわけではありません。

 強いて言えば、アシスタント・エンジニアにスティクス黄金期を支えることになるロブ・キングスランドが加わったこと、マスタリングを数多くのヒット作品を手掛けたダグ・サックスが行っていることが挙げられます。有形無形にメジャーの恩恵が及んでいるのでしょう。

 本作品はオリジナル・メンバーによる最後のアルバムになってしまいました。バンドの実験的な側面を担っていたジョン・クルリュウスキが本作を最後にスティクスを去ってしまいます。この作品でもクルリュウスキの単独曲は短いインストゥルメンタル曲1曲のみと影が薄い。

 曲作りは全8曲中6曲がデニス・デヤングの単独かメンバーとの共作曲です。ジェームズ・ヤングが単独で提供している曲はわずか1曲ですし、ヤングがリード・ボーカルをとる曲もその「ミッドナイト・ライド」のみ。デヤング色が強くなっています。

 これまでは冒頭にヤングの景気の良いロック曲を持ってくることが多かったですが、本作品では同じくアップテンポながら、シンセに導かれるデヤングの「ライト・アップ」で始まります。そしてシングル・ヒットしたデヤング作の「ローレライ」に続く構成です。

 コーラスワークを多用したポップでコンパクトな楽曲が並び、メジャーとなったスティクスの勢いが伝わってきます。しかし、プログレと称された片鱗が、クルリュウスキのアコギによるインスト曲と続く長尺の「スイート・マダム・ブルー」のドラマチックな展開に表れています。

 とにかく明るい。プロフェッショナル仕様の見事なサウンドが花開いています。ガレージ・バンドっぽいインディー時代もよかったのですが、スティクスにはメジャー仕様がやはり似合います。スティクスの黄金時代がいよいよ目前に迫ってきました。

 本作品は無事に全米チャートに顔をだし、最高位は58位とまずまずの成績を収めました。シングル「ローレライ」も39位とはいえトップ40入りしています。アルバムはじわじわと売れ続け、2年後にはゴールド認定されています。勢いが出てきました。

Equinox / Styx (1975 A&M)



Tracks:
01. Light Up
02. Lorelei
03. Mother Dear
04. Lonely Child
05. Midnight Ride
06. Born For Adventure
07. Prelude 12
08. Suite Madame Blue

Personnel:
Dennis DeYoung : vocal, keyboards
James "JY" Young : vocal, guitar
John Curulewski : vocal, guitar, synthesizers
Chuck Panozzo : bass, chorus
John Panozzo : drums, percussion