レッド・ツェッペリンの四枚目のアルバムは、表裏内外含めてジャケットには一切文字がありません。タイトルやアーティスト名はおろかレコード会社の名前すら記載しないという徹底ぶりです。当然レコード会社は反対したそうですが、ここはツェッペリンが我を通しました。

 このアルバムはどこか特別な作品でした。私は熱狂的なファンではありませんでしたが、畏敬をもって扱われているこの作品のオーラをひしひしと感じておりました。ある意味、ポピュラー音楽の枠を超えた作品としてロック界の誇りとされていたように思います。

 凄味のある作品からはツェッペリンの揺るぎない自信を感じます。田舎のスタジオにこもって制作された本作品には、四人の間に生まれたマジックを最高の形で封じ込めることに成功したという驚きのようなものを感じます。バンドにはそういう瞬間があるのでしょうね。

 本作品はレッド・ツェッペリンの全てのアルバムの中で最も売れた作品です。全世界で4000万枚近い売上を誇っているモンスター・アルバムです。セールス的には圧倒的に最高傑作というわけです。彼らの代表曲「天国への階段」が収録されていることも大きい。

 「天国への階段」はトラッドとハード・ロックと神秘主義をミックスしたような楽曲で、クイーンでいえば「ボヘミアン・ラプソディー」に当たる、ロック史上に永遠に残る名曲です。ジャケットには文字はありませんが、レコードを収納する内袋にこの曲だけ歌詞が印刷されました。

 歌詞を印刷したのは彼らにとって初の出来事です。それほど自信があったということでしょうし、この楽曲の歌詞の持つ意味がレッド・ツェッペリンの態度表明だったわけです。これだけ絶賛されると一言嫌味を言いたくなるところですが、何度聴いてもいい曲ですね、これが。

 この美しいメロディーと12弦ギターを聴くと感動します。やはり名曲です。この曲がA面最後におかれて、中ほどからアルバム全体を引き締めているのですが、とても変なノリのハード・ロックの「ブラック・ドッグ」を筆頭に他の曲も名曲揃いです。

 ロックを表す記号とされているストレートな「ロックン・ロール」、トラッド・フォークのバンド、フェアポート・コンヴェンションのボーカル、サンディー・デニーを加えた「限りなき戦い」、そして「天国への階段」と続く構成は見事です。昔はA面ばかり聴いていました。

 しかし、そうは言ってもB面も全曲覚えています。B面も、3曲目にアコースティックを持ってくるところなど、A面の構成とパラレルだと言えないこともありません。A面と対になるこちらのハード・ロック曲も素晴らしいです。とりわけA面以上にボンゾのドラムが凄い。

 特に最後の曲「レヴィー・ブレイクス」は何度聴いても、「あれ、ドラム・ソロ曲じゃなかったのか」と驚いてしまうほどにボンゾのドラムばかりが印象に残ります。ロバート・プラントのボーカルを始め、サウンドはすべて素晴らしいにもかかわらずです。

 前作は評論家やコアなファンの受けがよくなかったのですが、このアルバムで皆を黙らせることに成功しました。そして、ツェッペリンの横綱昇格が見事に満場一致で決まったわけです。ここから先は、三役の外に出て、王者の道をひたすら歩むこととなります。

Led Zeppelin IV / Led Zeppelin (1971 Atlantic)

*2014年4月14日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Black Dog
02. Rock And Roll
03. The Battle Of Evermore 限りなき戦い
04. Stairway To Heaven 天国への階段
05. Misty Mountain Hop
06. Four Sticks
07. Going To California
08. When The Levee Breaks

Personnel:
John Bonham : drums
Robert Plant : vocal, harmonica
Jimmy Page : guitar, mandolin
John Paul Jones : bass, piano, mandolin, recorder, synthesizer
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Sandy Denny : vocal
Ian Stewart : piano