1970年代のロックを知るものにとって、レッド・ツェッペリンは別格の存在です。友人に勉強の似合わないロック小僧がいましたが、バンド仲間の後輩がレッド・ツェッペリンを聴いていないことに「最近の若い奴は勉強が足りない」と憤慨していました。1980年頃のことですが。

 ビートルズやローリング・ストーンズ、それにマイケル・ジャクソンなど、世間的には彼らよりずっと知名度の高いアーティストと違うのは、ツェッペリンが音楽の世界以外で話題になることがほとんどないことです。アイドル的要素がない分、本格派の香りが別格感を醸します。

 レッド・ツェッペリンは、三大ギタリストの里であるヤードバーズ出身のジミー・ペイジを中心に、セッション・ミュージシャンとして有名だったジョン・ポール・ジョーンズ、当時無名だったロバート・プラントとボンゾことジョン・ボーナムの4人が集まって誕生しました。

 結成話の中では、ロバート・プラントが売れないバンドで歌っているのを聴いたペイジが「なんで彼が有名じゃないんだろう」と思ったという話が私は一番好きです。どんなに場末で歌っていたとしてもプラントの凄さの片鱗は現れずにはいられなかったのでしょう。

 加えてボンゾです。ジョン・ポール・ジョーンズは、ボンゾのドラムを聴いてバンドの成功を確信したといいます。ロック界を代表する凄いドラマーなわけで、この二人が無名だったというのも何だか凄いことです。見事に人材発掘の目があったわけですね。

 ジャケットは燃えるヒンデンブルク号。タイタニック号と並ぶ世界的な悲劇の写真です。衝撃の写真というわけです。サウンドはジャケットにひけをとらない衝撃を世間に与えたようです。残念ながら、私は少し遅れてきた世代なので、リアル・タイムでの騒ぎは知りません。

 ツェッペリンと言えば渋谷陽一氏。彼は、レッド・ツェッペリンの成功の鍵を、ペイジが「ブルースにのめり込みながらも自らの白人としてのロックを組織するだけの批評性を持っていた事」と言っています。ブルースを基礎としながらも、新しい白人のロックを生み出した。

 このデビュー作では、粘っこいブルース寄りの楽曲が中心に座っています。それが、ギターのリフを中心として、ド迫力のビートに色気たっぷりのボーカルがシャウトするツェッペリンならではのスタイルで演奏されますからとにかく圧倒されます。

 それにハード一辺倒ではなく、アコースティックな響きを使った楽曲もあります。 「ブラック・マウンテン・サイド」のタブラが今一つなのが玉に瑕ですが、東洋的な香りまでついています。デビュー作にして圧倒的な完成度を誇っているのは本当にすごいことです。

 チャートを制するとまではいきませんでしたが、息長く売れ続け、アメリカだけで800万枚を売っているといいます。本国イギリスばかりではなく、日本でも大いに売れました。なんたってハード・ロックを一夜にして築き上げた不朽の名盤ですから。

 大げさな曲の展開も迫力で押し切る、ハード・ロック史上に燦然と輝く名盤です。冒頭の「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」が鳴り出すと、ツェッペリン物語の幕開けです。隙だらけともいえるサウンドが後のアルバムにはない初心の魅力を放っています。

Led Zeppelin I / Led Zeppelin (1969 Atlantic)

*2014年4月7日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Good Times Bad Times
02. Babe I'm Gonna Leave You
03. You Shook Me
04. Dazed And Confused 幻惑されて
05. Your Time Is Gonna Come 時が来たりて
06. Black Mountain Side
07. Communication Breakdown
08.I Can't Quit You Baby 君から離れられない
09. How Many More Times

Personnel:
John Bonham : drums, timpani, chorus
Robert Plant : vocal, harmonica
Jimmy Page : guitar, chorus
John Paul Jones : bass, organ, chorus
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Viram Jasani : tabla