2022年には京都でブライアン・イーノの展覧会「ブライアン・イーノ・アンビエント・京都」が開催され、会場ではイーノについてうんちくを語りたがる親父が発生して大変迷惑だったと聞きました。若い子に教えてあげたい気持ちは分かりますが、やっぱり迷惑ですね。

 その展覧会でも体験することができたのが「77ミリオン・ペインティングス」です。2006年にラフォーレ原宿で初めて発表されており、16年ぶりに日本に里帰りしたと話題になっておりました。イーノと日本は結構縁が深いのだということが分かります。

 本作品は当時ラフォーレの会場にて限定販売されたCDです。77ミリオン・ペインティングスの音源を9曲に編集したもので、番号入り1000枚限定ということで会期中にもちろん完売してしまいました。手元にあるのは京都展を記念して復刻されたバージョンです。

 「77ミリオン・ペインティングス」は、音楽映像インスタレーションです。音楽が流れる中で映像が映されると言ってしまえば、通常の映画やビデオ作品と同じなのですが、そこはインスタレーションですから、場所も大事、空間ごとアートにしてしまうということです。

 具体的には「聖堂を思わせる巨大な空間の壁面には、4種類のサイズの映像が魔法陣のように計13個配置され、そこに写されたイメージは時間が経つごとにゆっくりと変化し、そのつど異なる『絵画(Painting)』のコンポジションを生成していく」というものです。

 映し出されるのは「幾何学的なパターンや色とりどりの描線」なのだそうです。この映像の組み合わせによって7千7百万通りの異なる映像を表示できるということからこのタイトルがつけられています。ラフォーレではこの映像を映し出すソフトウェアも販売されていたそうです。

 イーノはこの作品を原宿で初めて出展して以降、アップデートさせながら世界各地で47回も展示しています。もはやイーノのライフワークの一つといってよいでしょう。手元のCDはその音楽のみを収録しているものですから、何となくライフワークに申し訳ない気がします。

 サウンドにクレジットは一切ありませんから、制作された年や参加ミュージシャンなどは一切分かりません。結構ビートの効いた曲も入っていますし、「ネロリ」型のアンビエントではありませんから、イーノが一人で全部やったとも思えません。

 しかし、この作品は1997年に発表された「ザ・ドロップ」とよく似ているといえば似ています。そして、本家「ザ・ドロップ」が2014年にリイシューされた際にはボーナス・ディスクとして、本作品が丸ごと添付されています。レア盤だと思っていたのに少しがっかりしました。

 ただし、本作品にはボーナス・トラックとして「ライトハウス#156」が収録されてレア度を保っています。「ライトハウス」はイーノが2021年に始めたラジオ局でもあり、京都展にも出展された作品の名前でもあります。ここは1994年の156と付番された曲の収録です。

 もはやイーノの作品は単体のCDなどからははみ出しすぎていて、全体像を把握することなど誰にもできなくなっているのではないでしょうか。しかし、そうはいっても根は音楽の人ですから、こうしてぽつりぽつりと発表されるCDだけでも十分に素晴らしいところがイーノらしい。

77 Million / Brian Eno (2006 Opal)

参照:「ブライアン・イーノ待望の大規模古典『BRIAN ENO AMBIENT KYOTO』を最速フォトレポート」島貫泰介(Tokyo Art Beat) 



Tracks:
01. Never Stomp
02. System Piano
03. Bonk
04. Luxor Night Car
05. Targa Summer
06. Cold
07. Little Slicer
08. Surf Birds
09. Targa
(bonus)
10. Lighthouse#156

Personnel:
Brian Eno