スティーヴ・ペリーが加入した新生ジャーニーの第二弾「エヴォリューション」です。発表は1979年3月、この翌月にはジャーニー初の来日公演が行われました。デビュー当時はアメリカよりも日本での人気が高かったジャーニーですが、この頃はさっぱりでした。

 初日の名古屋公演では名古屋市公会堂に150人、東京公演では渋谷公会堂に200人しか観客が入らなかったそうです。日本では生まれ変わるのに時間がかかったようです。それでも文句ひとつ言わずに白熱のステージを展開したといいますから立派です。

 本作品ではついにドラムのエインズレー・ダンバーが抜けてしまい、後任にはモントローズのスティーヴ・スミスが加わりました。新生ジャーニーにはモントローズの方が近いのでこれは納得ですが、ダンバーがポップなスターシップに加入したのは納得がいきません。

 それはさておき、本作品ではますますペリーの存在が大きくなってきました。曲作りにおいても、1曲を除くすべての楽曲にペリーの名がクレジットされています。そして各楽曲におけるボーカルの比重もますます強まってきており、ジャム・バンド的な要素は影をひそめました。

 プロデューサーは前作に引き続きロイ・トーマス・ベイカーが務めています。彼のプロダクションには、ボーカルの重ね方や音の広がりなどにどうしてもクイーンの影をみてしまいます。ゴージャスなサウンドですが、メンバーには不満がくすぶっていた模様です。

 アルバムからは、ジャーニー初のトップ20ヒットが誕生しました。ペリーによる「ラヴィン・タッチン・スクウィージン」です。この楽曲はペリーによるとサム・クックの大ヒット曲「ナッシング・キャン・チェンジ・ジス・ラヴ」に触発されてできた曲だそうです。

 そのエピソードからも分かる通り、これまでのジャーニーからは出てこない類のソウルよりの楽曲です。ペリー色が強まったことの一つの象徴です。ペリーのボーカルはクックの影響を受けているとつとに指摘されるところですが、この曲などまさにそれを裏付けています。

 なお、最初にシングル・カットされたのは「ジャスト・ザ・セイム・ウェイ」でした。唯一ペリーが作曲にクレジットされていない曲で、グレッグ・ローリーがリード・ボーカルをとった曲です。従来のジャーニー路線の曲でしたが、残念ながらヒットには結びつきませんでした。

 こうなるとますます比重はペリーの方に傾いていきます。ニール・ショーンのギターは相変わらず活躍していますけれども、やはり中心はペリーのボーカルに移っています。ヒット・チャート的には勝負がつきました。あとは一直線にこの方向を極めていくのみです。

 アルバムは前作に引き続き、大いに売れました。チャート的には全米20位と過去最高を記録し、結果的には300万枚を売る大ヒットとなっています。まだまだジャーニーのヒットは続くので、この数字が小さく見えてしまうところが凄いです。

 なお、前作からジャケットの雰囲気ががらりと変化しています。これはグレイトフル・デッドのスカル&ローゼズを生み出したアルトン・ケリー&スタンリー・マウスの手になるデザインです。デッドとジャーニー、実に不思議な組み合わせだと言わざるを得ません。

Evolution / Journey (1979 Columbia)



Tracks:
01. Majestic
02. Too Late
03. Lovin', Touchin', Squeezin'
04. City Of The Angels エンジェルの街
05. When You're Alone (It Ain't Easy) 遥かなる旅路
06. Sweet And Simple
07. Lovin' You Is Easy
08. Just The Same Way
09. Do You Recall
10. Daydream
11. Lady Luck

Personnel:
Steve Perry : vocal
Gregg Rolie : keyboards, piano, vocal
Neal Schon : guitar, guitar synthesizer, chorus
Ross Valory : bass, Moog bass, chorus
Steve Smith : drums, percussion