ついにジャーニーにボーカリスト、スティーヴ・ペリーが加入しました。「インフィニティ」はペリー加入後初めてのスタジオ・アルバムです。前作「ネクスト」から1年弱、この作品が画期となり、ジャーニーは大人気スーパーバンドへの道を歩み始めました。

 専業ボーカリストの必要性を感じたジャーニーは、ボーカリスト・ハントを行い、ロバート・フライシュマンをはさんでスティーヴ・ペリーを加入させることとしました。フライシュマンは曲作りにその名をとどめています。フィッシュマンにとっては大変残念な話です。

 ペリーはジェフ・ベックとの仕事で知られるティム・ボガードとバンドを組んでいたり、キャプテン・ビヨンドのオーディションを受けたりしていたそうですが、ジャーニーから声がかかる時にはキャリアをほとんど諦めかかっていたそうです。運命です。

 そんな話が嘘のように、ここでのペリーは歌いまくっている上に、曲作りにも積極的に参画しており、実に10曲中8曲にクレジットされています。キャリアを積んだバンドに新たに加入した無名のボーカリスト、という形容がまるで当てはまらないような活躍ぶりです。

 この作品における前作からの大きな変化はもう一つあります。それはプロデューサーにロイ・トーマス・ベイカーが起用されたことです。この頃のベイカーといえば、彼がプロデュースを手がけたクイーンの大ヒットでぶいぶい言わせていました。

 コロンビア・レコードのジャーニーへの入れ込みようが知れます。結果は期待にたがわず、本作品はジャーニーの作品としては初めて全米トップ40入りしており、その後の彼らの人気もあって10年後にはトリプル・プラチナ認定を受ける大ヒットになりました。

 サウンドは明らかに変化しました。これまでのジャーニーの特色であったインプロビゼーションを多用する器楽演奏主体のサウンドから、ボーカルを中心にすえた、コンパクトでキャッチーなロック・サウンド、メインストリームなサウンドへの変化です。

 ベイカーによるクイーンを彷彿させるプロダクションは、ボーカルを重ねたオーケストレーションを多用しており、そのことがただでさえ目立つペリーのボーカルをより引き立てています。エインズレー・ダンバーのドラムもまたクイーンっぽい音になっています。

 グレッグ・ローリーはまだ2曲でリード・ボーカルをとっていますけれども、ほぼキーボードに専念しています。ここは以前よりも見せ場は増えたのですが、曲作りにもあまり関与しておらず、影が薄くなりました。あちらが立てばこちらが立たず、難しいものです。

 一方、ペリーとコンビを組んだ曲が4曲も収録されているニール・ショーンは相変わらずの大活躍です。伸びやかなギターは全部の曲で見せ場を作っており、とにかく気持ちよさそうに弾きまくっています。こうした曲の方がショーンのギターは映えるのですね。

 本作品からは「ホイール・イン・ザ・スカイ」、「エニイタイム」、「ライツ」の3曲がシングル・ヒットしており、昔のジャーニーとの違いが際立ちます。もはや別のバンドと捉えた方が聴いている方も気が楽です。きらきらと輝くポップ・スター、ジャーニーの誕生です。

Infinity / Journey (1978 Columbia)



Tracks:
01. Lights
02. Feeling That Way
03. Anytime
04. Lă Do Dā
05. Patiently
06. Wheel In The Sky
07. Somethin' To Hide
08. Winds Of March
09. Can Do
10. Opened The Door

Personnel:
Steve Perry : vocal
Neal Schon : guitar, chorus
Gregg Rolie : keyboards, vocal
Ross Valory : bass, chorus
Aynsley Dunbar : drums, percussion