レオン・ラッセルの初めてのライヴ・アルバム「レオン・ライヴ」はLPにして3枚組、3面見開き特殊仕様のジャケットに包まれた超大作です。全体で2時間弱、「鮮烈、衝撃、興奮の2時間!」です。2枚組は結構ありましたが、3枚組はさすがに当時も珍しかったです。

 しかし、その異例の3枚組を全米9位にまで押し上げるのですから、1973年当時のラッセルの人気のほどが知られます。翌年には日本にもやってきて、そのライヴ・アルバムも発表されています。ラッセルは日本でも大いに人気があったのでした。

 ライヴは1972年8月28日にカリフォルニアのロング・ビーチ・アリーナで行われました。約1万5千人収容の同アリーナはロック・コンサートのメッカとして有名で、同年にはローリング・ストーンズも「メイン・ストリートのならず者」をサポートするツアーを行っています。

 ライヴ・アルバムといえば何回かのコンサートから楽曲をセレクトする方が多いと思いますが、この作品は一発勝負です。しかも一回のステージをほぼ丸ごと収録しています。これもまた珍しいスタイルです。これぞライヴ・アルバムの鑑と言ってよいでしょう。

 ラッセルはここまでに3枚のアルバムを発表しています。徐々に人気を獲得し、画期となったバングラデシュ支援コンサートへの出演後の第三作「カーニー」は全米2位の大ヒットとなっていました。本作品はそれに続く大ヒット作品です。3枚組が勢いを象徴しています。

 バンドはラッセルに加えて、これまでのアルバムでお馴染みの面々、ギターのドン・プレストンとジョーイ・クーパー、ベースのカール・レイドル、ドラムのチャック・ブラックウェル、オルガンのジョン・ギャリーと息の合ったメンバーで固めています。

 そしてラッセルのシェルター・レコードからアルバムを発表しているゴスペル・グループ、ブラック・グラスのメンバーがコーラスのみならず一部リード・ボーカルも務めています。このうちの二人はこの時期ピンク・フロイドのツアーにも同行していたそうです。

 アルバムは終始ハイテンションの演奏が続きます。ラッセルのソロ作品としては、「ソング・フォー・ユー」や「マスカレード」などのスローな楽曲が有名ですけれども、このライヴではあえてそうした曲は入れず、あげあげの演奏で最初から最後まで通しています。

 また、冒頭のボブ・ディランの「マイティ・クイン」を中心としたメドレーを始め、3回もメドレー形式の演奏がおかれており、その中で語りも加えていかにも自由なライヴの空気を醸成しています。中でも「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」から「ヤング・ブラッド」のメドレーが凄い。

 ラッセルの作風はスワンプ・ロックと称されますが、いかにも湿度が高そうな粘り気のあるライヴ演奏は見事にその言葉を形にしています。ラッセルはしばしばリード・ボーカルをメンバーに委ねており、それがまたバンド全体が沼となっていることを強調しているようです。

 ジャケットのちょっと目がいっちゃってるラッセルの写真が演奏の充実ぶりを示しています。こんなライヴは1972年にしかありえないでしょう。「史上最大のレオン・ラッセル・ショー」はまぎれもなくラッセルのキャリアの頂点を記録していたのでした。

Leon Live / Leon Russell (1973 Shelter)



Tracks:
(disc one)
01. Mighty Quinn Medley
a) I'll Take You There
b) Idol With The Golden Head
c) The Mighty Quinn
d) I Serve A Living Savior
02. Shoot Out On The Plantation
03. Dixie Lullaby
04. Queen Of The Roller Derby
05. Roll Away The Stone
06. It's Been A Long Time Baby
07. Great Day
08. Alcatraz
09. Crystal Closet Queen
10. Prince Of Peace
11. Sweet Emily
12. Stranger In A Strange Land
(disc two)
01. Out In the Woods
02. Some Day
03. Sweeping Through The City
04. Jumping Jack Flash / Youngblood Medley
05. Of Thee I Sing / Yes I Am Medley
06. Delta Lady
07. It's All Over Now Baby Blue

Personnel:
Leon Russell :
***
Chuck Blackwell : drums
Ambrose Campbell : congas
Don Preston, Joey Cooper : guitar, vocal
John Galle : organ
Carl Radle : bass
Rev. Patrick Henderson : piano, vocal
Black Grass (Rev. Patrick Henderson, Nawasa Crowder, Phylliss Lindsey, Mary Ann Lindsey) : chorus