ジャーニーの3枚目のアルバム「ネクスト」です。次のアルバムからはスティーヴ・ペリーが加入するため、本作品はグレッグ・ローリーがリード・ボーカルをとる最後のアルバムになりました。そのことを反映して賛否両論がかまびすしい作品となっています。

 初期のジャーニーをよしとする人にとっては、ペリーに壊される前のジャーニー最後のアルバムですし、後のジャーニーが好きな人は、ペリーのいない中途半端なアルバムということになります。リトマス試験紙のようなアルバムだといえるでしょう。

 この頃のジャーニーはツアーに明け暮れており、次第にライヴでの人気は高まってきていました。ニール・ショーンのギターが縦横無尽に飛び回る、即興を交えた演奏が身上ですから、ライヴ人気の高さも分かります。しかし、レコードのセールスには結びつきません。

 ツアーで稼いだお金でやっていくことはできましたが、やはりそこは印税生活の方がよいのでしょう。何とかレコードを売れないものかと考えた彼らは、その原因を彼らの曲が演奏力の高さを生かした楽器のための曲が多いことに求めました。

 楽器の達人ばかりなので、実はインプロヴィゼーションをやる方が簡単だったのだそうです。曲作りの方が難しい。そこで、ジャーニーは楽器演奏を抑えめにして歌うことを決めました。安定収入を得る道は歌唱にあり。確かに一理あるような気がします。

 しかし、本作品はそこまで振り切れていません。まだまだ前作、前々作の延長上にあります。バンドの4人全員が作曲にクレジットされている典型的なグループによるインストゥルメンタルのジャム演奏曲「ニッケル・アンド・ダイム」のかっこいいことかっこいいこと。

 歌の方は、サンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」を歌っていたローリーが相変わらずリード・ボーカルをとっていますが、ショーンも2曲で歌を披露するようになりました。とはいえ、二人は基本的には楽器の人です。専業ボーカリストにはなれません。

 同じように歌っていても、ボーカル曲か器楽曲かといえば、たとえば「ブラック・マジック・ウーマン」は器楽曲に分類されるということだと思います。ここでのジャーニーはしっかり歌っていますけれども、歌と楽器がひと塊となっていて、カラオケでは歌わない曲ばかりです。

 彼らの思惑通りにはいきませんでしたけれども、ここでのジャーニーの演奏は素晴らしいです。アルバムは「ロケット・マン」と「スペース・オデッセイ」を足して二で割ったような雰囲気の「スペースマン」で始まります。ピンク・フロイドのようだと評する人もいる曲です。

 そこから全部で8曲、ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンなどのハード・ロックの巨人たちを彷彿させる場面も多いですし、プログレと呼ばれることが素直に納得できる複雑な構成の曲もあり、特にショーンのギター、エインズレー・ダンバーのドラムが冴えまくっています。

 ここまでのジャーニーを大好きな人が多いのも納得できます。ローリーはこの頃のジャーニーをデイヴ・マシューズ・バンドやフィッシュなどのジャム・バンドになぞらえています。私としてはイエスのようになっていく未来もあったのではないかと想像してしまいます。

Next / Journey (1977 Columbia)



Tracks:
01. Spaceman
02. People
03. I Would Find You
04. Here We Are
05. Hustler
06. Next 果てしなき挑戦
07. Nickel And Dime
08. Karma

Personnel:
Gregg Rolie : keyboards, vocal
Neal Schon : guitar, vocal
Ross Valory : bass, chorus
Aynsley Dunbar : drums, percussion