アッシャー・テリー・レイモンド4世という本名を持つ米国を代表するR&B歌手アッシャーの4枚目のアルバム「コンフェッションズ」です。このアルバムはとにかく売れました。米国だけで1000万枚を越えてダイアモンド・ディスクに輝いています。

 日本でも50万枚を越すというウルトラ・ヒットになっています。アッシャーの作品はすべてがベスト・セラーになっていますが、その中でも本作品のセールスは頭抜けています。彼が敬愛するマイケル・ジャクソンでいえば「スリラー」に当たる作品です。

 ただし、手放しでは喜べません。このアルバムは発売からわずか7か月後にスペシャル・エディションが発売されているのです。そちらは、収録されていない全米1位シングル「マイ・ブー」を含む4曲が追加され、さらに5曲が新しく編集され、ファンの購買意欲をそそりました。

 まるで日本のアイドルのような商法は物議を醸しました。私は初版を買ったので、被害者の一人ともいえますけれども、今となってはいらっとしたことも懐かしい出来事です。インターネットでのリークなどで被害を受けているアーティストですからまあ広い心で受け止めましょう。

 本作品でもこれまで同様にジャーメイン・デュプリを始め、数多くの大物プロデューサーを迎えています。この中でもっとも大きな話題となったのはリル・ジョン、フィーチャリング・アーティストとしてもクレジットされている楽曲「YEAH!」の破壊力です。

 この曲はもちろん全米1位、00年代10年間チャートの2位になっています。本作品はリル・ジョンにとっても出世作といえる楽曲でもあり、クランクと呼ばれるスタイルを一躍ブームにした楽曲とも言われています。要するに時代を画した新しい楽曲だということです。

 ほとんどシンセによるフレーズのループとシンプルなドラムのみともいえるスカスカながら中毒性の高いサウンドを背景に、アッシャーが力強く歌い、リル・ジョンとルディクラスによるラップがフィーチャーされる、シンプル極まりないくせのある楽曲です。かっこいいです。

 アルバムからはほかに「バーン」、「コンフェッションズ・パート2」、「コート・アップ」の3曲といえばいいのか「マイ・ブー」を加えて4曲といえばよいのか分かりませんが、とにかくこれらのシングルがカットされ、「コート・アップ」以外は全部1位になっています。

 私はアルバムの中で「コート・アップ」が一番好きなのですが、さすがに5枚目のシングルでは1位になるのは難しかったのでしょう。他にも「シンプル・シング」であるとか、結局全曲をあげてしまいそうになるくらい、全部の曲が素晴らしいです。旬のアーティストは凄いです。

 本作品はメガ・セールスを記録しただけではなく、アルバムはグラミー賞でもベストR&Bアルバムに輝いていますし、とにかく評論家筋からの評価も極めて高いものがあります。何といってもアッシャーのR&Bスタイルの歌唱は年寄でも安心して聴けますから。

 ヒップホップ全盛の時代にあっても、アッシャーのような歌を聴かせる歌手が人気を博するのは大変結構なことです。ブラック・ミュージックの伝統をしっかりと引継ぎ、前衛から少しだけ下がったところにあるかのような見事な楽曲群です。中毒性の高いかっこいい作品です。

Confessions / Usher (2004 Arista)



Tracks:
01. Intro
02. Yeah!
03. Throwback
04. Confessions (interlude)
05. Confessions Part II
06. Burn
07. Caught Up
08. Superstar (interlude)
09. Supersta
10. Truth Hurts
11. Simple Things
12. Bad Girl
13. That's What It's Made For
14. Can U Handle It?
15. Do It To Me
16. Take Your Hand
17. Follow Me
(bonus)
18. Whatev er I Want
19. Confessions Part I

Personnel:
Usher Raymond
***
Lil' Jon, Ludacris : featuring artist
Jermain Dupri, Desto Music, Lil' Jon, Rich Harrison, Jimmy Jam, Terry Lewis, Robin Thicke, Bryan-Michael Cox, Just Blaze, Dre & Vical, Bobby Ross Avila, James "Big Jim" Wright : producer