グレイトフル・デッドのアコースティック・ライヴ作品「レコニング」の対になるエレクトリック・セットによるライヴ・アルバム「デッド・セット」です。本作品もLPにして二枚組でしたけれども、CDでもボーナス・ディスクを加えて2枚組になっています。

 「レコニング」と同じく、バンドの15周年を記念する1980年10月のライヴ演奏から編集されています。このライヴはサンフランシスコとニューヨークで足掛け2か月にわたって行われ、何と合計すると100曲あまりのべ700曲もの演奏を行ったのだそうです。

 ライヴの行われたサンフランシスコのウォーフィールド・シアターもニューヨークのラジオ・シティーも、スタジアム級の会場でライヴを行うことも多いデッドにしては小さな会場で観客とバンドの距離が近い居心地のよい空間だったようです。

 ジャケットにはサンフランシスコの風景が描かれ、裏面にはニューヨークが描かれています。どちらも橋を中心にした構図になっており、アメリカを代表するバンドらしい堂々たる風格を感じさせます。あまりにアメリカすぎて疎外感を感じるほどです。

 デッドはこの頃にはデッドヘッズたちを組み込んだビジネス・モデルをほぼ確立しています。ライヴ・チケットのメール・オーダー・サービスを始めていますし、ライヴ会場では移動式のレストランやお店、トラベル・サービスなどがデッドヘッズたちによって運営されていました。

 さらに以前から許可していたライヴ録音もますます活発になっていきます。このため、本作品が解散前の最後のライヴ・アルバムだと聞くと何だか驚いてしまいます。後に発表されるおびただしい数のライヴ盤のことを思うと不思議な気さえします。

 しかも、そうしたライヴ盤では一公演を丸ごと収録することが標準となるのに対し、本作品は同じ時期とはいえいくつかの公演の演奏を編集していまから、何となくライヴ盤としては不完全な気がしてしまいます。録音の音質もまるで遜色ありませんし。

 本作品はこれまでのライヴ盤とは異なり、ライヴそのものをパッケージして届けようとしていますからなおさらです。この頃にはまだテープ市場は内輪のものでしたから、多くの人にとっては待望久しいライヴ盤となり、その使命を十分に果たしています。

 本作品には「フレンズ・オブ・ザ・デビル」、「キャンディーマン」、「フランクリンズ・タワー」、「ファイヤー・オン・ザ・マウンテン」などお馴染みの曲が選ばれています。問題作「シェイクダウン・ストリート」はボーナス・ディスクでようやく収録されました。無難な選曲でした。

 しかし、1曲平均8分以上というのがデッドのライヴの定番であることを考えると、本編はいずれも短く抑えられているのが残念です。この点も後のデッドヘッズによるライヴ盤を待たなければなりません。気合の入った演奏なのに難儀なことです。

 サウンドは充実しています。初期の頃にくらべると演奏に余裕と風格が漂っています。独特のグルーヴがゆらゆらと流れていくのを聴いているだけで十分幸せです。ドラム・バトルの「リズム・デヴィル」と集団即興の「スペース」も顔を出しており、ダイジェストとしては十分です。

Dead Set / Grateful Dead (1981 Arista)

*2011年12月24日の記事を書き直しました。



Tracks:
(disc one)
01. Samson And Delhilah
02. Friend Of The Devil
03. New Minglewood Blues
04. Deal
05. Candyman
06. Little Red Rooster
07. Loser
08. Passenger
09. Feel Like A Stranger
10. Franklin's Tower
11. Rhythm Devils
12. Space
13. Fire On The Mountain
14. Greatest Story Ever Told
15. Brokedown Palace
(disc two bonus)
01. Let It Grow
02. Sugaree
03. C.C. Rider
04. Row Jimmy
05. Lazy Lightnin'
06. Supplication
07. High Time
08. Jack Straw
09. Shakedown Street
10. Not Fade Away

Personnel:
Jerry Garcia
Mickey Hart
Billy Kreutzmann
Phil Lesh
Brent Mydland
Bob Weir