ジャーヴィス・チャーチはカナダを拠点に活動するR&Bのシンガーソングライター、プロデューサーです。ジャーヴィスもチャーチもトロントの通りの名前で、チャーチがソロ・デビューする際にこの二つを組み合わせてステージネームとされました。。

 チャーチの仕事の中で最も成功したのはネリー・フルタドのプロデュースです。こうした仕事では本名のジェラルド・イートンを使っていますから要注意です。2000年のフルタドのアルバムではグラミー賞のベスト・プロデューサーにノミネートもされています。

 チャーチはジャマイカのスパニッシュ・タウンの出身です。8歳の時にはカナダに移住していますけれども、ボブ・マーリーの伝説的な「ワン・ラヴ・ピース・コンサート」には間に合っており、そこで受けた衝撃がチャーチに音楽の道を進ませることになりました。

 13歳の頃には音楽活動を始めており、1990年代にはカナダにてR&Bポップ・グループ、フィロソファー・キングのリード・ボーカルとして活躍しました。バンドはカナダでは大きな成功をおさめますが、たびたび活動を休止しており、その間、各メンバーはソロ活動に勤しみます。

 チャーチのソロ・デビューは2002年の「シェイク・イット・オフ」です。その後、フィロソファー・キングは活動を再開しますが、2006年のアルバムを最後にまた活動を休止、その時に発表されたのがチャーチのソロ第二作「ロング・ウェイ・ホーム」です。

 ジャケットには「ジャマイカ」の文字も見えますし、ブックレットにはジャマイカ島の地図が印刷されています。「ロング・ウェイ・ホーム」のホームは明らかにジャマイカのことです。この作品はチャーチがジャマイカに捧げたアルバムなのでしょう。

 フィーチャーされているアーティストにもミスター・ペッパやセシルとジャマイカ出身者がみえます。それに何よりも本作品を通してレゲエのリズムが大活躍しています。R&Bないしはアシッド・ジャズのアーティストとされてきたチャーチですが、ここではレゲエ全開です。

 もちろんセルフ・プロデュースが中心ですけれども、一部、フィロソファー・キングの仲間ブライアン・ウェストとのチーム、トラック・アンド・フィールドによる曲や、イギリスのダンス・ミュージック・プロデューサーのウィリアム・オービットによる曲もあります。

 エレクトロニクスだけでトラックを作り上げている曲もあれば、生楽器を効果的に使った曲もあり、久しぶりのソロ・アルバムということで多くのアーティストの協力を得て、さまざまなスタイルで作品を作り上げています。そのすべてをチャーチのボーカルがまとめていきます。

 フィーチャリング・アーティストの中で最も有名なのはステイシー・オリコでしょう。日本でも人気のある米国の歌手ですが、この頃から長い活動休止期間に入りますから貴重な歌声です。オリコの「ビューティフル・アウェイクニング」をプロデュースした縁での参加です。

 この作品は、レゲエの香りのする良質のボーカル曲が並んでいてとても楽しいアルバムです。非の打ちどころがありませんけれども、なぜかさほど話題になりませんでした。この後のチャーチはサム・クックとカーティス・メイフィールドへのトリビュートに取り組むことになります。

The Long Way Home / Jarvis Church (2008 Magwa Dawg)



Tracks:
01. Just Like That
02. I'll Rock Your Body
03. So Beautiful
04. Love Song
05. Do For You
06. Give Thanks For The Girl
07. Whole Day Long
08. Shake It Off
09. Lovers Kiss
10. Wine It
11. Finally
12. Basic Guy

Personnel:
Jarvis Church : vocal, production
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Rock Supreme, Cecil, C4, Stacie Orrico, Mr. Peppa : featuring artist
Brukkout, Mike Elizando, Yogie, William Orbit, Track and Field : production
Jack Viera, Dave Lichens, Beezy, James McCollum, Bezzy : guitar
Brian Lebarton, Jon Levine : keyboards
Mike Elizando : bass, guitar
Dwight "Duke" Dawes : organ
Deleon Jubba White : drum programming
Russ Miller : drum
Duke Mushroom : percussion