ジャケットが面白いです。ピーター・フランプトンが着用しているTシャツには、フランプトンが在籍していたハンブル・パイの盟友スティーヴ・マリオットの顔写真がプリントされています。音楽性の違いでたもとを分かった二人ですけれども、円満な別れだったことが分かります。

 この作品はフランプトンのソロ第四作目「フランプトン」です。フランプトンのソロ・アルバムとしては初めて米国でトップ100入りし、最高位は32位、ゴールド・ディスクを獲得した出世作です。前三作の売れ行きがぱっとしませんでしたから、ようやく苦労が報われたといえます。

 バンドからは後のフォリナー、リック・ウィルスがツアーに疲れて脱退しています。彼の代わりにベースを弾いているのは、ツアーではキーボードを担当していた元ハードの盟友アンディ・ボウンです。ドラムだけは前作に引き続き、ジョン・シオモスが担当しました。

 実はボウンも本作品を最後にツアー・バンドをやめることを決めています。そんなわけでマルチ・プレイヤーであるボウンもここではベースを担当するのみです。結局、フランプトンは前作に引き続き、ここでもギターのみならずキーボードも弾いています。

 この状況にフランプトンも何かふっきれたかのような元気な姿を見せています。ロック・バンドとしては最小単位のバンドで、実に気持ちよさそうにギターを弾いて、歌を歌っています。彼のトレードマークでもあるトークボックスを使って変調した声も使って楽しげです。

 アルバムからは「ショウ・ミー・ザ・ウェイ」や「君を求めて」など、フランプトンの代表曲ともなった、とてもポップな名曲が誕生しており、精力的にこなしてきたツアーには最後の燃料が投下されました。すでに高い評価を得ていたライヴにさらに火が付きました。

 こうしたポップな曲を中心にしたアルバムですが、天才とうたわれたフランプトンのギターの技はアコギ、エレキの両方で冴えています。私は「悲しみのピエロ」が大好きです。甘いメロディーのバラードにロックらしくない甘くて丸い音色のギター・ソロが全開です。

 しかし、ポップなばかりではありません。アルバムの最後を飾るのはレッド・ツェッペリンを意識して作ったという「マネー」です。ハード・ロック全開のサウンドで、フランプトンのロック魂が顔を出しています。一方、「ナッソー」はアコギによるフュージョンです。実に幅広い。

 幅広いといえば「空白の時間」です。これもアコースティック・ギターによるトラッド調のインストゥルメンタルの小品です。本作品はウェールズのシャトーでレコーディングされたと嬉しそうにフランプトン自身が綴っていますが、この曲にその雰囲気が最もよく表れています。

 この作品は70年代ブリティッシュ・ロックの一つの典型だと思います。ブギーの入ったシンプルなサウンドとハスキーな声によるポップなボーカルのベスト・マッチ。スタジオ作であっても、ライブ中心の音楽活動であることを感じさせるバンド感があって、私は大好きです。

 この頃のロックはとても無邪気です。いろんなものがまだまだ出そろっておらず、アーティストは考え過ぎることなく、やりたいことをやりたいようにやっています。思えば聴いている方もそうでした。10代の私は、無邪気に心の底から楽しめていたなあとしみじみと思います。

Frampton / Peter Frampton (1975 A&M)

*2015年4月18日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Day's Dawning 夜明け
02. Show Me The Way
03. One More Time
04. The Crying Clown 悲しみのピエロ
05. Fanfare
06. Nowhere's Too Far (For My Baby) 愛の面影
07a. Nassau
07b. Baby, I Love Your Way 君を求めて
08. Apple Of Your Eye 君の瞳に
09. Penny For Your Thoughts 空白の時間
10. Money

Personnel:
Peter Frampton : guitar, piano, organ, bass, talkbox, vocal
***
John Siomos : drums, percussion
Andrew Bown : fender bass
Poli Palmer : vibes