グレイトフル・デッドが同名のデビュー・アルバムを発表する前の録音を集めたコンピレーションです。その名も「バース・オブ・ザ・デッド」、ため息がでるほどかっこいいタイトルです。二枚組で一枚はスタジオ録音、もう一枚はライヴ録音を収録しています。

 本作品はもともとデッドの作品を集めたボックス・セット第一弾「ザ・ゴールデン・ロード(1965-1973)」を発表する際にボーナス・ディスクとして制作されたものです。その2年後には単体でも発売されることになり、めでたくディスコグラフィ入りしました。

 グレイトフル・デッドは1965年初めごろに5人組ロックン・ロール・バンド、ザ・ウォーロックスとしてスタートしました。サンフランシスコのバーで演奏することになった彼らは毎夜毎夜ステージを繰り返します。そしてはやくも11月にはスタジオでデモ作品を録音します。

 最初の録音はオータム・レコードなるレコード会社のためのもので、オーナーのトム・ドナヒューがプロデュースしました。この会社にはプロデューサーとして後のスライ・ストーン、シルヴェスター・スチュワートも所属していたので、そちらだったら面白かったのに残念です。

 実はこの時、すでにザ・ウォーロックスなるバンドが存在することを知った彼らはエマージェンシー・クルーなる仮の名前を使い、その後に未来永劫残るであろうバンド名、グレイトフル・デッドになったのでした。まさにバース・オブ・ザ・デッドでした。

 この録音は発表には至りませんでしたが、続く1966年6月にスコルピオ・レコードに録音した楽曲はシングル盤「スティーリン/ドント・イーズ・ミー・イン」として発売になりました。これがデッドのレコード・デビューです。ういういしくて大人しい演奏です。

 最後はブルース歌手ジョン・ヘンドリックスのために1967年3月に「ファイヤー・イン・ザ・シティ」を録音しています。伴奏に徹するデッドでした。本作品にはここまでの三つのセッションからの録音を網羅しています。いずれも初々しいながらもデッドはデッドという演奏です。

 二枚目のライヴは1966年7月ということは分かっているものの、正確な日付や場所は不明だということです。こちらにはデビュー・アルバムでも最大の話題となった「ヴィオラ・リー・ブルース」が冒頭に収録されています。ここでも10分近くあります。

 さすがに定評あるライヴですから、デビュー前であっても完成されています。オリジナル曲は数えるほどしかなく、大半はフォークやブルース、R&B曲のカバーとなっており、デッドの出自を物語っています。こちらもすでにデッドらしい演奏が堪能できます。

 この頃はまだミッキー・ハート加入前で、ドラムはビル・クルーツマン一人です。そして、ベースはボブ・ウィア、リズム・ギターにフィル・レッシュ、リード・ギターはもちろんジェリー・ガルシア、そしてこの頃、一番目立っていたのがオルガンのロン・ピッグペン・マッカーナンです。

 最初のスタジオ録音の時には5人がそろって半年あまりだったわけですし、ライヴもほぼ1年くらいしかたっていません。それにしては息の合った演奏が聴かれます。歴史的な価値を喜ぶ作品ではありますが、数あるデッドのライヴの一つとして十分に楽しめる演奏です。

Birth of the Dead / Grateful Dead (2001 Rhino)



Tracks:
(disc one)
The Studio Sides
01. Early Morning Rain
02. I Know You Rider
03. Mindbender (Confusion's Prince)
04. The Only Time Is Now
05. Caution (Do Not Stop On Tracks)
06. Can't Come Down
07. Stealin'
08. Stealin' (with vocals)
09. Don't Ease Me In
10. Don't Ease Me In (with vocals)
11. You Don't Have To Ask
12. Tastebud
13. Tastebud (with vocals)
14. I Know You Rider
15. Cold Rain And Snow
16. Cold Rain And Snow (with vocals)
17. Fire In The City
(disc two)
The Live Sides
01. Viola Lee Blues
02. Don't Ease Me In
03. Pain In My Heart
04. Sitting On Top Of The World
05. It's All Over Now, Baby Blue
06. I'm A King Bee
07. Big Boss Man
08. Standing On The Corner
09. In The Pines
10. Nobody's Fault But Mine
11. Next Time You See Me
12. One Kind Favor
13. He Was A Friend Of Mine
14. Keep Rolling By

Personnel:
Ron "Pigpen" McKernan : organ, harmonica, vocal
Jerry Garcia : guitar, vocal
Bob Weir : guitar, vocal
Phil Lesh : bass
Bill Kreutzmann : drums
***
Jon Hendricks : vocal