大きく出たものです。国の名前をそのままバンド名にするところに気概が伝わってきます。何と言ってもUKはスーパーグループですから、各メンバーが伝統を背負っており、小さな名前ではまとまらないのでしょう。その心意気は十分に伝わってきました。

 UKはパンクの時代にUKで誕生しました。本作品はセルフ・タイトルのデビュー・アルバムですけれども、日本では「憂国の四士」と名付けられました。パンク時代にロックの行く末を憂いたレコード会社の方々の熱い思いを彼らが一身に担うことになったのです。

 実際、彼らも十分に意識しており、ドラムのビル・ブラッフォードは「パンク・ロックは誰にでも出来るというのが支持されている要因だけど我々の音楽は違う。誰もアランのようにプレイできるわけじゃない-というのが我々の音楽の哲学だ」と語っています。

 UKは解散したキング・クリムゾンからジョン・ウェットンとビル・ブラッフォード、ロキシー・ミュージックからフランク・ザッパ先生のバンドを経たエディー・ジョブソン、そしてソフト・マシーンやゴングで活躍したアラン・ホールズワースの四人によるバンドです。

 知らない人はさしたる感慨もわかないでしょうが、当時、プログレッシブ・ロックを少しでも聴いていた人々にとっては嬉しい驚きの布陣でした。メンバー選びの過程では元イエスのリック・ウェイクマンに白羽の矢が立っていたと聞いてさらに驚いたものです。

 初めてUKの噂を聞いた時には、これはパンクでさんざんコケにされたプログレの逆襲だと思ったものです。とはいえ、大きな期待を抱いたわけでもなく、何をいまさら、と片方では思っていました。それでも興味はあって、友人が買ったと聞きつけて聴かせてもらいました。

 サウンドはこの布陣から期待される通りのプログレっぷりです。「パンク・ロックをナイフで突き刺すサウンド」と自称する通り、単純なロックからはかけ離れた、高度な演奏技術に裏打ちされた複雑なアンサンブルを聴かせるという意味でのプログレ・サウンドです。

 キング・クリムゾンを彷彿させるリズム・セクションに、ザッパ先生の影響を受けたジョブソンのキーボード、ソフト・マシーン直系のホールズワースのギターと、聴きどころは十分です。一切、ポップに流れませんし、ジャズっぽくはあるものの清く正しいロックです。

 作曲では全曲にジョブソンがクレジットされていますし、バイオリンを含めた彼の活躍ぶりが目立ち、元はキーボード・トリオを考えていたのもよく分かります。そこに後から加わったホールズワースはジャズ的な感覚を持ち込んでおり、なかなかに絶妙なバランスです。

 しかし、そのバランスは危ういところに成立しており、この当時からUKは短命に終わるであろうと囁かれていたように記憶しています。まあ、強烈なエゴがぶつかることが宿命ですから、スーパーグループというものはいずれはかないものです。

 本作品はチャート・アクションは良くなかったものの、根強く売れましたし、ツアーも成功しました。密かにロックの行く末を憂いていた人が実は多かったことを証明したバンドだと思います。ウェットンはこの経験を生かして後にエイジアで大成功をおさめることになります。

U.K. / U.K. (1978 EG)

*2013年11月12日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. In The Dead Of Night
02. By The Light Of Day
03. Presto Vivace And Reprise
04. Thirty Years
05. Alaska
06. Time To Kill
07. Nevermore
08. Mental Medication

Personnel:
Eddie Jobson : violin, keyboards, electronics
John Wetton : bass, vocal
Allan Holdsworth : guitar
Bill Bruford : drums, percussion