アイナ・ジ・エンドの二枚目のソロ・アルバム「ゾンビ」はファースト・アルバムからわずか9か月で発表されました。彼女の所属するBiSHの解散発表のほんの少し前のことです。以降、解散に向けたカウントダウンでソロ活動は一旦小休止となります。

 そちらのニュースが大きくてつい失念してしまいますが、前作「ジ・エンド」から本作品の頃までのアイナのソロ活動はとても活発でした。コンスタントに配信限定とはいえシングルが発表されていますし、EPも出して、さらにはソロ・ツアーまで。大活躍です。

 本作品は前作以降に発表された楽曲をすべて収めた上に新曲を2曲加えた集大成的なアルバムです。いわばベスト・アルバム。いかにも配信時代のアルバムの作り方です。アルバムとしてのまとまりよりも、楽曲それぞれの魅力を楽しむという作品のあり方です。

 まずは2021年3月に発表されたEP「内緒」から4曲、7月発表のシングル「残して」、9月発表の「ボーン・シック」から4曲、10月の「デッド・ハッピー」から4曲、これで13曲。ここに導入のインスト曲「ZBI」、そして新曲「神様」と「はっぴーばーすでー」で全16曲です。

 前作はほぼ亀田誠治が編曲を手掛けており、コロナ禍もあって、アイナと亀田のキャッチボールで制作されましたけれども、本作品の場合は、ベスト・アルバム的な構成でもあり、アイナとタッグを組んだサウンド・プロデューサーは8人にも上っています。

 まずは亀田、そしてOvallの関口シンゴとシンゴ・スズキ、東京スカパラダイスオーケストラの加藤隆志、 サザエさんの劇伴を担当する河野圭、有料粗大ごみ処理券のジョルジオブレーズギヴン、ハードコア・フリージャズバンド、ナツメンのAxSxE、シン・サキウラ。

 いずれも一線で活躍しているプロデューサーばかりであり、アイナの磁力は凄いことが分かります。椎名林檎やジェニーハイ、モンド・グロッソなどとのプロジェクトもありましたし、アイナのボーカリストとしての魅力がさまざまなアーティストを引き付けるのでしょう。

 楽曲はすべてアイナが作詞作曲しています。そうして生まれた曲のデモを仲間と一緒に制作し、それを各プロデューサーに渡していきました。そしてサウンドのレコーディングにも立ち会ったそうで、とことんアイナのアルバムに仕上がっていることがわかります。

 サウンド・プロデューサーが多彩ですから、演奏ももちろんさまざまです。たとえば「ZOKINGDOG」はほぼスカパラの演奏です。バンド形態の曲もあれば、ストリングスを使った楽曲もあり、EDMももちろんあります。ジャズっぽかったり、アイドルっぽかったり。

 しかし、アイナの声は凄いです。どんな演奏であってもしっかりと存在を主張します。誰が関わろうとも、これはザ・ボーカリストのアルバムです。スクランブル・アイナももちろん素晴らしいのですが、こうして他流試合をやってもその魅力は燦然と光っています。

 私の一押しは「ペチカの夜」です。アルバムの最後を締めくくる絶唱が素晴らしい。一流のプロデューサーがこぞって作ったアルバムはもちろん耳を奪うのですが、元となった近しい仲間とのデモ・テープも聴いてみたいと強く思ってしまいました。

The Zombie / Aina The End (2021 Avex Trax)



Tracks:
01. ZB1
02. Zokingdog
03. ロマンスの血
04. Sweet Boogie
05. 神様
06. はっぴーばーすでー
07. Retire
08. 誰誰誰
09. 残して
10. 家庭教師
11. 彼と私の本棚
12. 勘違いべいびー
13. おでかけワンピース
14. ワタシハココニイマス for 雨
15. あぁ揺れてる
16. ペチカの夜
(bonus)
17. 残って

Personnel:
アイナ・ジ・エンド : vocal
***
加藤隆志, 亀田誠治, Giorgio Blaise Givvn, 関口シンゴ, AxSxE, Shin Sakiura, Shingo Suzuki, 河野圭 : producer
Riki Hidaka, Yuko Nagoshi, Yoshio Tanaka, Takashi Kato, Susumu Nishikawa, Shingo Sekiguchi, AxSxE, Yoshito Tanaka, Yukio Nagoshi, Massive W : guitar
Shoko Nakamura, Seiji Kameda, Kazuhiro Sunaga, Shige Murata, Kosei Ueno, Naoto Tada, Shoko Nakamura : bass
Kin-ichi Motegi, Atsushi Miki, Akira Tsuneoka, Reiji Okamoto, mabanua, Fumihiro Ibuki, Kazuya Ooi : drums
Kiyooshi Sakai : marimba, Glockenspiel
Makoto Minagawa, Kiyooshi Sakai, Kei Kawano : piano
Yuichi Oki, Kazuhiro Bessho, Kan Sano : keyboards
Tabu Zombie, Koji Nishimura : trumpet
Sarah Maeda, Takuo Yamamoto : sax
Yoichi Murata : trombone
Akiko Tajima, Akatsuki Takahashi, Atsuki Yoshida, Miho Chigyo, Aya Ito, Matsuri Mikuni : violin
Izumi Kawmura, Kintaro Hagiya : viola
Hiroaki Sakata, Kirin Uchida : cello
Sumitada Koseki : drum tec
Yasutaka Toyoda , Giorgio Blaise Givvn, Shin Sakiura : programming