UAの出現は突然でした。どのアーティストも突然現れるものですけれども、UAの場合はことさらに突然感が強かった気がします。それまで日本にはいないタイプのシンガーでしたからそのように感じるのだと思います。ルックスもとても個性的でしたし。

 本作品はそのUAのデビュー・アルバム「11」です。何が11かというと収録曲数が11です。正確には12曲収録されているのですが、12曲目はシークレット・トラックですし、「情熱」のミックス違いですから、曲の数という意味では11です。

 こうしたタイトルのつけ方もとてもUAらしいです。さらにUA11の文字デザインはデーヴナーグリー文字仕様になっており、インドを感じさせます。ジャケットにはたくさんの腕輪をつけて、エスニックな首飾りをまとったUAの姿。何から何まで新鮮でした。

 UAは1995年にデビューして、順調にシングルを発表し、4枚目のシングル「情熱」でブレイクしました。この作品はその「情熱」から、「リズム」、「雲がちぎれる時」の三枚のシングルを含むデビュー・アルバムです。UAが全開になった作品といえます。

 このアルバムの制作陣がすごいです。まず「情熱」は朝本浩文のプロデュースです。朝本はオートモッドからミュート・ビートに参加していたミュージシャンで、この頃から多くのアーティストをプロデュースする才人です。オートモッドというのが私のツボです。

 なお、本作品の「情熱」はキング・ワダダ・ダブとされるリミックスでの収録です。星野源のアルバムを支えるエンジニアとして知られる渡辺省二郎と朝本のラム・ジャム・ワールド・コンビによる大胆なダブ・ミックスです。ただし通常版がシークレット・トラックで収録されています。

 続くシングルの「リズム」はモンド・グロッソの大沢伸一がプロデュースしています。大沢の得意とするゆったりとしたクラブ・ミュージックに、エスニックな香りのするエモーショナルなUAの歌唱がしっくりくる名曲です。これがアルバムの冒頭におかれてカラーを決めています。

 3枚目のシングル「雲がちぎれる時」はふたたび朝本のプロデュースですけれども、他の楽曲は別のプロデューサーが起用されています。まずはイカ天キングでデビューしたリトル・クリーチャーズの青柳拓次、そして、テクノ/エレクトロニカの竹村延和。

 さらに、アコーディオンといえばこの人というcoba、セカチューを始めとする映画音楽でも活躍する音楽創作ユニットめいなCo.、イギリスで活躍していたプロデューサー、大庭良治、その縁かと思われるハウイーBのジェレミー・ショーと謎のサイモン・リッチモンド。

 こうした気鋭のサウンド・クリエイターズとともに作り上げたクラブ的なサウンドに、エスニックながら歌謡曲好きだということがよく分かるUAのボーカルが輝きます。声が独特というわけでもなく、リズム感が特殊というわけでもありませんが、妙に耳に残ります。

 アルバイト先のジャズクラブで歌っているところをスカウトされたという出来すぎたエピソードがよく似合う人でもあります。余裕綽綽のプロっぽい歌唱ではなく、より切実で切迫した歌唱は歌そのものです。サウンドがどうであれ我が道をいくUAの姿がまぶしいです。

11 / UA (1996 ビクター)



Tracks:
01. リズム
02. 大きな木に甘えて
03. 落ちた星
04. バラ色
05. ゼリー
06. ヒマワリ
07. 雲がちぎれる時
08. 情熱(king wadada dub)
09. 紅い花
10. 水色
11. ランデブー
(secret track)
12. 情熱

Personnel:
UA : vocal
***
大沢伸一、青柳拓次、大庭良治、竹村延和、Jeremy Shaw, Simon Richmond, 朝本浩文、めいなCo.、coba : producer
福岡省吾、花田裕之、浦山秀彦 : guitar
細木隆広、岡野ハジメ、井上富雄、Mecken : bass
張紅陽 : piano, synthesizer
池畑潤二、青山純 : drums
鈴木光人 : drum programming
仙波清彦 : percussion
坂口修一郎 : trumpet
臼庭潤 : tenor sax
佐野聡 : trombone
竹井誠 : 尺八
Honzi : violin
佐々木久美、坪倉唯子 : chorus
薮原正史、鈴木正人、木村健治、浦山秀彦 : programming
朝本浩文、渡辺昇二郎 : remix