コズミック・ジョーカーズはクラウトロックのスターが集まって結成したスーパーグループだとばかり思っていましたけれども、本人たちにはバンドという意識はまったくない上に、当人たちの知らないところで本作品が発表されていたといういわくつきの事件です。

 要するにセッション音源をプロデューサーが勝手に発表したものです。素晴らしい内容だけにちゃんとした手続きを踏んでいれば祝福されただろうと思いますから大変残念です。ただ、その胡散臭いところがアルバムに魅力を加えているともいえますから複雑です。

 仕掛け人はロルフ・ウルリッヒ・カイザーです。クラウトロックを語るに際して欠かせないオールやピルツ、コスミッシェなどのレーベルを立ち上げて、アシュ・ラ・テンペルやタンジェリン・ドリーム、グルグル、ポポル・ヴーなどの重要バンドを世に出した人です。

 カイザーはLSDの伝道師ともいえるティモシー・リアリーと知り合うと、ますますLSDに入れ込むことになり、本作品にも登場するディーター・ディークスのスタジオでレーベル所属のアーティストらとともにドラッグ・パーティーを頻繁に開催するようになります。

 その際に、ディークス・スタジオではジャム・セッションが行われるようになります。本作品はそれを録音したテープをカイザーとディークスが編集してアルバムに仕上げ、参加アーティストの許可を得ないままにリリースしたものです。バンド名もカイザーが勝手につけています。

 参加しているアーティストはアシュ・ラ・テンペルのマニュエル・ゲッチング、元何と紹介していいのか分からない大物クラウス・シュルツェ、ワレンシュタインのユルゲン・ドラーゼとハロルド・グロスコフ、そしてスタジオ・オーナーのディークスの計5人です。

 ディークスにはスコーピオンズのプロデューサーとして名をはせるという意外な未来が待っています。ここでは録音とミックスにも名を連ねていますが、プロデューサーとしてはカイザーとそのパートナー、ギレ・レットマンの二人がクレジットされているのみです。

 そのような経緯で制作されたアルバムだけに、参加ミュージシャンはジャム・セッションに際してはレコード化などまるで想定していなかったことは明らかです。しかし、詰め込まれているサウンドはとても完成度が高く、そんな経緯が信じられないほどです。

 アルバムには考えてみれば当然のことながらA面とB面に1曲ずつの収録です。まずA面の「ギャラクティック・ジョーク」はゲッチングのトレードマークともいうべき、浮遊する美しいエレキ・ギターが存分にフィーチャーされたアシュ・ラっぽい曲です。

 かわってB面の「コズミック・ジョイ」はシュルツェのシンセサイザーが中心となる、題名の通りコズミックな曲です。けっして平坦ではなく、聴きどころの多い構成力にすぐれた楽曲です。これをセッションから切り出したカイザーのセンスには脱帽します。

 アルバムの発表当時はシュルツェによる差し止め訴訟が起こされるなど、経緯にふさわしい扱いを受けました。しかし、時は流れ、クラウトロックのエッセンスを詰め込んだような素晴らしい作品だけに、今では名盤とされてこうして正式に商品化されています。何といいますか。

Cosmic Jokers / Cosmic Jokers (1974 Kosmische)



Tracks:
01. Galactic Joke
02. Cosmic Joy

Personnel:
Dieter Dierks : bass
Harald Grosskopf : drums
Manuel Göttsching : guitar
Jürgen Dollase : vocal, keyboards
Klaus Schulze : synthesizer