スージー・クアトロ初のライヴ・アルバムは1977年の日本公演を収録した2枚組「ライヴ!!」で、日本、オーストラリア、南アフリカのみで発売されました。クアトロ人気は日本とオーストラリアが突出していたことがよく分かります。

 より正確には1977年6月15日の大阪厚生年金会館でのライヴが収録されています。マイク・チャップマンはまだお隠れになったままでしたし、ミッキー・モストは飛行機嫌いだったために来日しておらず、クアトロとギターのレン・タッキーがプロデュースまで手がけました。

 クアトロはライヴ全体をそのまま最初から最後まで収録することにこだわっています。この二枚組アルバムで完全収録できたのかは分かりませんが、曲順などはそのままだろうと思われます。起承転結のあるしっかりと構成されたショーであることがよく分かります。

 クアトロは1974年に初来日してから、ここまで毎年来日してライヴを行っています。公演数も増えており、地方での集客も見込めるスターなのでした。日本酒のCMにも出演するほどの人気ぶりだったといえば当時の状況が分かっていただけると思います。

 ライヴは生きのいいシングル曲「ワイルド・ワン」で幕を開け、直前の「クアトロ白書」の曲を中心に、クアトロ流のハード・ドライヴィンなロック曲が連打されます。1970年代のロックが一番熱かった時代です。心躍るというのはこういうライヴでしょう。

 途中、バラードの名曲「キャット・サイズ」でボーカリストとしての力量を見せつけます。ベースを担当して激しく動き回るクアトロは、この曲でじっくり歌えるのがライヴの一つの楽しみだったと言っています。このボーカルは胸にしみます。かっこいいです。

 ただし、タッキーによればクアトロは初日に喉を傷めてしまい、本作品の制作にあたって、何曲かボーカルを録り直しているそうですから気をつけなければなりません。また、タッキーのギターは全部録り直したそうです。ちゃんと録れてなかったようです。

 そんな事情はあるものの、アルバムの一番の楽しみはアナログではC面にあります。キャッチーな曲「燃えるときめき」で、メンバー全員がソロを披露しているんです。これはライヴならではの企画です。もちろんクアトロのベース・ソロも堪能できます。

 クアトロには「ベースは子宮にびんびん響く」という一言があります。私には一生分からないお話で、うらやむことしかできません。観客の手拍子が合っていないうらみはあるものの、めったに聴けない貴重な演奏です。結構な長尺でも飽きさせません。

 サウンドはずいぶんすっきりしており、若干ライヴの醍醐味には欠ける恨みがあります。この点、残されている彼女の来日公演の映像でのラフなサウンドの方がライヴの熱気をとらえています。演奏の勢いと観客の熱狂を目の当たりにすると魅力が倍増します。

 とはいえ、クアトロのライヴはそれほど残されていないこともあり、これはとても貴重な作品です。演奏もしっかりしていますし、何よりもクアトロのボーカルが凄いです。1970年代のロックのライヴの素晴らしさを堪能させてくれる素敵なアルバムであることは間違いありません。

Live and Kickin' / Suzi Quatro (1977 RAK)



Tracks:
01. The Wild One
02. The Honky Tonk Downstairs
03. Heartbreak Hotel
04. Half As Much As Me スリルがいっぱい
05. Cat Size
06. Make Me Smile (Come Up And See Me) やさしくスマイル
07. American Lady
08. Glycerine Queen
09. What's It Like To Be Loved 燃えるときめき
10. Can The Can
11. Devil Gate Drive
12. Roxy Roller
13. Tear Me Apart 恋はドッキリ
14. Keep A-Knockin'

Personnel:
Suzi Quatro : vocal, bass
Len Tuckey : guitar, chorus
Mike Deacon : keyboards, chorus
Dave Neal : drums, chorus