あけましておめでとうございます。今年もどうぞご贔屓にしてくださるようお願いします。

 ティラノザウルス・レックスの2枚目のアルバムです。デビュー・アルバムからわずか3か月で発売されました。この頃のマーク・ボランには詩想が溢れていたのでしょう。彼が書いていた詩のノートにはまだまだ使われていない歌詞がたくさんあったそうです。

 パーカッションとギター&ボーカルのデュオですし、短いラフな曲が多いですから、ほぼ即興に近いのではないかと思います。歌詞がそんなに出来ているなら、いくらでも曲は出来ていったんでしょう。それでも粗製乱造にはならず、独特の雰囲気の素晴らしい曲ばかりです。

 彼の作る音楽は、妖精やホビットの世界の雰囲気を醸し出しています。マーク・ボランは「僕は都会が嫌いだし、現代生活の現実も嫌いだ。プラスチックなものを見ると嫌な気になる。胸の奥に秘めた思いはとても古典的で、日々の生活からは遠い。」と語っています。

 ヒッピーとは似ているようで異なる姿勢です。実際、彼はヒッピーの格好をしていたもののヒッピーとは一線を画していましたし、この当時はドラッグも嫌悪していたそうです。こんな風体のアングラの星がドラッグをやっていないのは当時としては驚異的なことだったでしょう。

 こんな音楽を聴いていると仕事をする気が失せてきます。そういうと現実逃避だとか言われるわけですが、現代社会の下らなさはしっかりと認識しておいた方がいいと思います。大たい「世間を知る」ということは碌なことではありません。

 子供にやっちゃいけないと教えていること、嘘をつく、ひがむ、そねむ、いじめる、すねる、いばる、などなどから世間は出来ていることを理解するってことですから。「現代社会の日常とはかけ離れた美しいものだけを思っていたい」とするボランの気持ちもよく分かります。

 社会で繰り広げられるラット・レースにくだらないと思いつつも参戦している人への応援歌、ないしはレースを下りて雄々しく生きている人々のための音楽なのかもしれません。1960年代終わりの作品ですけれども、そのメッセージは永遠です。

 さて、前作がプロデューサーのトニー・ヴィスコンティの初プロデュース作品であり、イギリス初の8トラックでのレコーディングだったということですから、慣れないところもあったのでしょう。さらにサウンドにコンプレッサーをかけ過ぎたとの反省点もありました。

 本作はスタジオを最新設備の整ったトライデント・スタジオに移し、最適なエンジニア、マルコム・トフトを得て、ヴィスコンティにとって満足のいくサウンドを得ることができました。シンプルな楽器構成であるからこそ、むしろ複雑な録音になったそうです。

 大たいスティーヴ・トゥックの持ち込む楽器は普通と違いますから録り方も大変だったそうです。それを見事にやりとげたからこそ「悪戯好きの妖精みたいな」マーク・ボランの個性を体現したアルバムが出来上がったのでしょう。格段の録音技術の進歩です。

 前作からわずか3か月ですから曲調が大きく変わったりしていないのですが、全体に随分と作品然としてきました。特にパーカッションの音はすっきりしています。内容は前作に遜色ありませんが、売れ行きは見劣りしたようで、徐々にあのTレックスの足音が近づいてきました。

Prophets, Seers & Sages The Angles Of The Ages / Tyrannosaurus Rex (1968 Regal Zonophone)

*2011年9月22日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Deboraarobed
02. Stacy Grove
03. Wind Quartets
04. Conesuala
05. Trelawny Lawn
06. Aznageel The Mage
07. The Friends
08. Salamanda Palaganda
09. Our Wonderful Brownskin Man
10. O Harley (The Saltimbaques)
11. Eastern Spell
12. The Travelling Tragition
13. Juniper Suction
14. Scenescof Dynasty
(bonus)
15. One Inch Rock
16. Nickelodeon (take 1)
17. Wind Quartets (take 1)
18. Conesuala (take 9)
19. Trelawny Lawn (take 1)
20. Aznageel The Mage (take 1)
21. Salamanda Palaganda (take 4)
22. Our Wonderful Brwonskin Man (take 2)
23. O Harley (The Saltimbaques) (take 4)
24. Eastern Spell (take 5)
25. The Travelling Tragition (take 2)
26. Juniper Suction (take 4)
27. Scenescof Dynasty (take 4)
28. One Inch Rock (take 3)

Personnel:
Marc Bolan : vocal, guitar
Steve Peregrin Took : bongos, vocal, African talking drums, percussion