ジャパンは1982年12月の日本公演を最後に解散してしまいます。解散前にすでにミック・カーンはソロ・アルバムを発表していましたが、デヴィッド・シルヴィアンもまた坂本龍一とのコラボレーションによるシングル曲を発表していました。彼の最初のソロ活動ともいえます。

 

  それが両A面シングル「バンブー・ハウス/バンブー・ミュージック」で、発表は1982年7月のことです。二人のコラボは「孤独な影」の「テイキング・アイランズ・イン・アフリカ」以来のこととなります。この頃はまだ坂本はYMOの一員でもありました。

 

  坂本らしいオリエンタルなムードにあふれた楽曲で、坂本がロンドンにわたって一緒に録音した後、シルヴィアンが時間をかけて完成させました。ドラムにはスティーヴ・ジャンセンが参加しており、スティーヴ・ナイもプロデュースに参加しています。

 

  英国のチャートでは30位とそこそこヒットしましたけれども、シルヴィアン自身は出来上がりには必ずしも満足していない様子です。制作過程とはうらはらに坂本の作品にシルヴィアンがゲスト参加しているようなたたずまいに聴こえますから悩ましいです。 

 

 続くコラボレーションはジャパン解散後にシングルとして発表された「禁じられた色彩」です。この曲はいわずもがなですが、坂本の代表曲でもある「戦場のメリークリスマス」のテーマにシルヴィアンがボーカルを加えたものです。シルヴィアンが東京に出向いて制作しました。 

 

 当初はメロディー・ラインを歌う予定だったそうですが、無理があるということで、メインのメロディー・ラインにカウンターをぶつける形で歌い上げています。タイトルは三島由紀夫の「禁色」から採られていて、映画の内容とも見事にシンクロしています。

 

  この曲は「錻力の太鼓」に収録された「ゴウスツ」と並んで、シルヴィアンがソロとして活動していくにあたってきわめて重要な一歩になりました。その一つは詩作です。一聴して明らかですが、この曲はキリスト教信仰に深くかかわっています。

 

  実際、シルヴィアンは「この時、キリスト教信仰に取りつかれるようになっていた」と話しています。「答えのない自分自身のこと」を描いた初めての曲で、「とても正直なことで、そのことが書き続ける決心をさせてくれた。もう後戻りできない」。なんとすがすがしいことでしょう。

 

  バンブー2曲に比べても、坂本印が刻印されているのは明らかにこちらの曲のはずであるにもかかわらず、むしろこの曲の方がシルヴィアンの顔が色濃く写っています。坂本の用意したサウンドの素晴らしさに打たれたシルヴィアンの渾身のカウンターが決まりました。

 

  いずれもシングルでアルバムに収録されなかったために、不安定な状態に置かれていましたが、1991年に両シングルをまとめたCDが発売されました。それが本作品です。バンブー2曲は7インチと12インチの二つのバージョンがありますが、ここでは12インチの収録です。

 

  「禁じられた色彩」は2バージョン収められています。一つは坂本がプロデュースしたもの、もう一つはスティーヴ・ナイがプロデュースしたものです。私はどちらかといえば、あまり手の入っていない坂本バージョンが好きです。素朴なところが禁断っぽいです。

 

 Forbidden Colours / David Sylvian/Ryuichi Sakamoto (1983 Virgin) 

 

*2015年5月22日の記事を書き直しました。

 

 参照:"On The Periphery" Christopher Young

 

 

 

Tracks: 

01. Forbidden Colours 禁じられた色彩 

02. Bamboo Houses 

03. Bamboo Music 

04. Forbidden Colours Version II 

 

Personnel: 

David Sylvian : keyboard, vocal 

坂本龍一 : keyborad, MC4, marimba, vocal 

Steve Jansen : percussion, keyboard