「プログレッシブ・ロックの最後のきらめき」とストレンジ・デイズの岩本編集長が絶賛するイングランドの唯一無二の傑作「枯葉の落ちる庭園」です。この場合、イングランドはバンド名です。このサウンドにはこのバンド名がぴったりでもあります。

 イングランドは1975年に英国のケント州で誕生したバンドです。メンバーはマーティン・ヘンダーソン、フランク・ホランド、ロバート・ウェッブ、ジョード・リーの4人で、いずれもイングランド後は、大活躍とまではいきませんが音楽活動を続けています。実力派ですから。

 結成後は比較的早くアリスタ・レコードとの契約に成功し、1年かけてじっくりと本作品の制作に取り組みました。レーベルは彼らのサウンドに期待を寄せますが、時期が悪かった。この1年の間にイギリスはパンク・ロックに席巻されてしまったのでした。

 イングランドのスタイルはプログレッシブ・ロックそのものでした。パンクは既成の音楽全般に挑戦状を叩きつけましたが、その最も分かりやすい標的がプログレでした。本作品を発表した時点では、新人プログレ・バンドは揶揄の対象でしかありません。

 デビュー作となる本作品「枯葉の落ちる庭園」も力作であるにもかかわらず、商業的には大失敗に終わり、ほどなくして、イングランドは解散してしまいました。5年後には復活するのですが、それもほとんど知られることはありませんでした。

 しかし、時が経ち、パンクもプログレも同じ過去の音楽となった今、全盛期のプログレ・エッセンスを詰め込んだ本作品の評価はいや増しに高まり、日本や同じくプログレ大国の韓国でCDが再発されて好評を博すと、2006年には来日公演まで実現してしまいました。

 本作品のサウンドは「初期イエスやジェネシスに影響を受けたスリリングな曲展開にポップなメロディとメロトロンやオルガンなどのサウンドを見事に融合した叙情味溢れる内容」と紹介されています。この紹介からも分かる通り、どこからどう見てもプログレです。

 1977年といえば、まだまだ大物プログレ・バンドは元気に活躍していましたけれども、スタイル的にはすでに出尽くした感じはありました。イングランドは後発の強みを生かして、さまざまなスタイルを自分のものとして、ザ・プログレ・サウンドを作り上げています。

 それだけ純度が高く、私などが聴くと思わず目頭が熱くなります。サウンドはとにかく美しいですし、メロディーも素敵。妙にテクニックをひけらかすこともなく、複雑すぎない叙情的なサウンドに、ヨーロッパの田園風景が浮かんできます。こういう音を聴きたい時もありますよね。

 面白いのはウェッブの操るメロトロンです。何と大きいからと半分に切って改造したのだそうです。それだけの技術をもっていたというところにまずは驚きます。特に変わった音になっているわけではありませんが、語り伝えたい逸話です。

 本作品は10分を超える二曲を含む全6曲で構成されており、曲構成もザ・プログレですし、既成のジャム缶を模したジャケットもザ・プログレ。そのプログレぶりに胸が熱くなります。時代に恵まれませんでしたが、あの頃にしか生まれなかったサウンドであることもまた確かです。

Garden Shed / England (1977 Arista)



Tracks:
01. Midnight Madness
02. All Alone (Introducing)
03. Three Piece Suite
04. Paraffinalea
05. Yellow
06. Poisoned Youth
(bonus)
07. Nanagram

Personnel:
Martin Henderson : bass, vocal
Franc Holland : guitar, vocal
Robert Webb : keyboards, vocal
Jode Leigh : percussion, vocal, bass