記号のようなタイトルです。語呂で「だしおしみ」と読まれることもあるようですが、これはイメージ中の倉庫番号なのだそうです。しかし、この時代のことですから、図ったわけではないでしょうが、悪魔の数字404が含まれているところが面白いです。意味深ですし。

 中森明菜の8枚目のスタジオ・アルバム「D404ME」です。前作からわずか4か月での発表は多作な彼女にしてもハイペースだといえます。それほどこの頃の中森明菜はのりにのっていたということでしょう。本作品は日本レコード大賞の優秀アルバム賞を受賞します。

 シングル曲との関係を整理すると、本作品には同年3月発売の「ミ・アモーレ」がスペシャル・バージョンで収録されています。5月発表の「ミ・アモーレ」の別歌詞バージョン「赤い鳥逃げた」は12インチ・シングルのみで本作品には収録されていません。

 さらに本作品の2か月前、6月発表の「サンド・ベージュ」、2か月後に発表される「ソリチュード」は収録されていません。シングルとアルバムを両方買っても損はしないというファン思いの戦略です。中森明菜のアルバム・アーティストぶりを思い切り堪能しましょう。

 本作品は前作と同様、楽曲ごとに完成した世界を描く路線が継続しています。今回の作曲者の顔ぶれは、飛鳥涼やラテンの松岡直也に加えて、新たに大貫妙子、ゴダイゴのタケカワユキヒデ、後藤次利、忌野清志郎、NOBODYなどが並んでいます。豪華です。

 職業作家は都志見隆のみで、後はすべてアーティストとして実績を残している人ばかりです。さらに今回は編曲者も、前作に引き続いて、井上鑑、AKA-GUY、清水信之、松岡直也が参加している他、後藤次利、プリズムの中村哲、そして久石譲と大変豪華です。

 演奏も前作同様に、各楽曲でまるで異なるミュージシャンが担当しています。豪華編曲陣がそれぞれ大胆なアレンジを施し、それに名うてのスタジオ・ミュージシャンたちが息を吹き込む。中森明菜の存在が大きくなればなるほど、彼らの本気度もあがるというものです。

 中森明菜は当初からアーティスト志向でしたが、前作あたりからはそれが明確に表れてきています。実際に、この頃の彼女はアルバムの構成やシングル曲の選定、さらにはサウンドにも自ら積極的に発言しているという話が伝わってきていました。

 本作品はそうした志向が見事に実を結んだアルバムです。極めつけは「ミ・アモーレ」のスペシャル・バージョン。ラテン・パーカッションだけの演奏で始まり、おもむろにカバキーニョに伴われて歌が始まります。たぐいまれな楽曲はさまざまなアレンジで味わいつくされます。

 飛鳥涼の「ノクターン」や忌野清志郎の「スター・パイロット」、後藤次利の「アレグロ・ビヴァーチェ」など、シングル化してもおかしくない曲も多いですが、あえて独立した各楽曲を並べてなおアルバムとしての完成度を追及する試みが見事に成功していると思います。

 中森明菜の情念たっぷりな歌声がやはり一番の聴きものです。フュージョン系やラテン系、ロック系とさまざまな曲調であっても、すべては中森ワールドに取り込まれていきます。すべてを飲み込むザ・歌謡曲ワールドです。やはり中森明菜は日本の歌姫の名にふさわしい。

D404ME / Akina Nakamori (1985 ワーナー・パイオニア)



Tracks:
01. Endless
02. ノクターン
03. アレグロ・ビヴァーチェ
04. 悲しい浪漫西
05. ピ・ア・ス
06. Blue Ocean
07. マグネティック・ラヴ
08. Star Pilot
09. モナリザ
10. ミ・アモーレ

Personnel:
中森明菜 : vocal
***
今剛、松原正樹、大村憲司、佐橋佳幸、北島健二、和田アキラ : guitar
井上満 : cavaquinho
高水健司、長岡道夫、後藤次利、富倉安生、伊藤広規、清水信之、高橋ゲタ夫 : bass
山木秀夫、島村英二、渡嘉敷祐一、青山純、広瀬徳志 : drums
斉藤ノブ、浜口茂外也、三島一洋、フランシス・シルバー : percussion
井上鑑、新川博、富樫春生、国吉良一、中村哲、久石譲、清水信之 : keyboards
斉藤晴、中村哲、ジェイク・コンセプシオン : sax
兼崎順一、数原晋、荒木敏男、林研一郎、吉田憲司、岸義和 : trumpet
早川隆章、井口秀夫、三田治美、岡田澄雄、西山健治、中沢忠孝、花坂義孝 : trombone
伊集加代子、鈴木宏子、和田夏代子、新倉芳美、椎名和夫、渡辺直樹、木戸泰弘 : chorus
友田啓明グループ : strings
: chorus